論点整理・コメント

探究学習と大学での学び

苅谷千尋

金沢大学

October 28, 2026

Ⅰ. はじめに

自己紹介

センターでの企画・業務

その他

  • 前任校(公共政策系)において「PBL(問題解決型学習)」や初年次教育に長く携わる

探究をめぐる、私が経験したモヤモヤ

  • あるワークショップでの高校の先生
    • 「生徒が、私にも読めないような分厚い本をしっかり読んで探究学習に取り組んでいる。見方によっては本をまとめているだけに見えるが、簡単なことを行なっているようにはとても思えない。華々しい実験だけが評価されるのはおかしいのではないか」
  • あるワークショップでの生徒
    • 「大人が解決できないような問題を、高校生が解決できるわけないよね笑」
  • ポスターセッションにおいて他校の生徒に質問する高校の先生
    • 「先行研究がもうあるんじゃないの?」

探究に関わる研究・議論の現在地

  • 高校と大学の埋めがたいギャップ:「教育接続」問題
    • 溝上 (2023); 岡田 (2025); Thompson et al. (2021)
  • 探究学習の文脈において、高大接続は案外、論じられない
  • 探究で頑張った生徒は、大学でも頑張る、は検証を要する仮説(願望?)
    • 探究学習の経験は大学でどう活きるのか(プレゼンテーション能力など、目に見えやすいアカデミック・スキルだけ?)

探究に関わる研究・議論の現在地

学校と社会をつなぐ調査(通称:10年トランジション調査、河合塾)

  • 学習や成長に対するマインドセットやキャリア意識は高校までに形成されており、大学で後から変えることは容易ではない

高校の先生方が「大学受験が一番大事」「いろいろ我慢しても、大学にとにかく入れ」「大学に入ったら好きなことをして」と言うことが駄目だという話を実証的に示すために、この調査〔「10年トランジション調査」〕を始めたわけです。たくさん我慢して大学生になっても、それまでにしてこなかったことは大学生になってもできない。大学でいろいろと育てようと思っても、学生自身にその意欲がないのです。そういうマインドセットは、高校までにしっかりと出来上がっていて、キャリア意識も大きいです。自分が成長しようと端から思っていない(溝上 (2023, p. 38))。

Ⅱ. コメント

附属高校

  • 附属高校のミッション
    • 高校教育の理論的・実証的研究
  • ミライシコウ金沢の意義・価値
    • 高校生が高校生や助言者との交流を通じて探究を深める
    • 参加した教員(高校・大学)が探究の現在地やレベルを学ぶ
    • 探究の評価
  • Cf. 探究学習の「研究」化(高橋 (2020))
    • 2020年になされた指摘(警告)が依然、放置されている

問題の所在 > 探究学習の「研究」化

学会発表,論文執筆,論文投稿,コンテスト入賞など,推薦入試で求められる探究学習の内容は,学習指導要領の内容を遥かに超える(高橋 (2020, p. 42))。

先端的な科学研究,学会発表や論文執筆は,本来大学教育で行う内容ではないかという疑問も残る。「探究」ではなく「研究」が行われるようになり,それを“獲得ポイント”として,大学に進学するという道筋は,自己の方向性を見つめ,社会との関わりを見出す発達段階にある高校生にとって果たして適切な教育なのだろうか(高橋 (2020, p. 42))。

多忙な中で,対応しきれないと「総合的な学習の時間」のように形式的な対応を取ったり,探究学習を“外注”したりする場合には,高校生の教育活動としての探究学習は後退していくであろう(高橋 (2020, p. 42))。1

錦丘高校

  • 探究未来課の設置
    • 探究活動 + キャリア教育 + 図書館運営
  • 何を「良い探究」と評価するか
    • 陥りやすい見方:入賞・メディア掲載が「よい探究に見える」
    • 本来見たいもの:プロセスで身についた力
  • プロセスで身についた力の可視化と振り返り
    • 振り返りの言語化を支援することも(こそ?)、教師の支援を要する?(Cf. 木村 他 (2022))

中教審ワーキング(生活・総合)

  • 次期学習指導要領(2030年から実施)の改定を目指して「質の高い探究」をどう実現するのかについて、定義や連携のあり方などが議論された(2025年10月から2026年8月)

委員として参加する酒井先生(立命館宇治中学校・高校)の感想

こうした議論〔ワーキング〕に参加しながら、「成果物ができたか」「発表がうまくいったか」だけでは測れない学びを、言葉にしようとしていることを感じています。とりわけ、学びの成果を成果物の完成度そのものではなく、問いを通して意味や価値に向かっていく学習のプロセスとして整理し直そうとする姿勢は、現場で感じられてきた違和感と深くつながっています。また、問いが変わること、仮説が外れることは、失敗ではなく学びの途中なのだというメッセージが、制度の言葉として表れ始めているようにも感じました( 酒井 (2026, p. 143))。

大学4年次3月時点での意識調査:探究活動で育成された資質・能力

  • 令和4年(2022年)入学者対象(回答率:3.2%)

大学4年次3月時点での意識調査:探究学習に熱心に取り組みましたか? × 大学生活の中で、どのくらい力を入れてきましたか

振り返り

振り返りも形式化・形骸化しうる

  • 不必要な宿題・業務が増えただけ(Scully et al. (2018))

成功事例:Wakimoto & Lewis (2014)

  • 大学院生の多くが、自身の能力や専門家としての成長を振り返る上で学習ポートフォリオを有用と評価
  • 成功を支えた仕組み
    • 作成方法のガイド; 「モデル」ポートフォリオ; 評価ルーブリック; ピアレビューとフィードバック

インプリケーション

  • 振り返りを「課す」だけでは不十分; 何を、どのように振り返るかを支援することが重要

Ⅲ. 論点

論点

  • Q1. 高校の探究で育った力は、大学のどのような場面で表れるのか
  • Q2. 主体性などの非認知能力の評価に、大学の専門性をどう生かせるか
  • Q3. 高校で生まれた問いや未完成の探究を、大学でどう深められるか
  • Q4. aaa
  • Q5. aaa
  • Q6. 高校が大学に期待していることは何か

引用文献

引用文献

Scully, D., O’Leary, M., & Brown, M. (2018). The Learning Portfolio in Higher Education: A Game of Snakes and Ladders. Dublin City University, Centre for Assessment Research, Policy & Practice in Education (CARPE) and National Institute for Digital Learning (NIDL).
Thompson, M., Pawson, C., & Evans, B. (2021). Navigating Entry into Higher Education: The Transition to Independent Learning and Living. Journal of Further and Higher Education, 45(10), 1398–1410. https://doi.org/10.1080/0309877x.2021.1933400
Wakimoto, D. K., & Lewis, R. E. (2014). Graduate Student Perceptions of Eportfolios: Uses for Reflection, Development, and Assessment. The Internet and Higher Education, 21, 53–58. https://doi.org/10.1016/j.iheduc.2014.01.002
岡田 航平(2025).なぜ当事者視点で高校と大学の関係性を描くことが必要なのか? 京都大学大学院教育学研究科紀要,71, 113–126. https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/items/830d229e-4359-4c87-8e3a-56de5a165d24
苅谷 千尋・田中 千晶・中野 正俊(2026).高校在学中の「学びの転換」的経験が成長実感に与える影響:高大接続プログラムの取り組みと追跡調査 大学入試研究ジャーナル,36, 23–30. https://doi.org/10.57513/dncjournal.36.0_23
木村 竜也・寺西 望・伊藤 大輔(2022).PBLに基づいた「総合的な探究の時間」における生徒の振り返りの検討 日本教育工学会研究報告集,2022(4), 134–141. https://doi.org/10.15077/jsetstudy.2022.4_134
酒井 淳平(2026).誤解だらけの探究学習:「手応えがない」ときの25のヒント 明治図書
高橋 亜希子(2020).新高校学習指導要領と探究学習 : 難関大学への別ルートになりつつある探究学習 アカデミア. 人文・自然科学編,19, 31–43. https://doi.org/10.15119/00002855
西岡 加名恵・大貫 守(2020).スーパーサイエンスハイスクール8校の連携による「標準ルーブリック」開発の試み 教育方法の探究,23, 1–12. https://doi.org/10.14989/250860
日本学術会議 心理学・教育学委員会高大接続を考える分科会(2023).【報告】 日本における高大接続の課題:「セグメント化」している現状を踏まえて 日本学術会議
溝上 慎一(2023).トランジション実現のための影響の大きな高校・大学での学びを理論的、実証的に示す 2020年代を通じて実現すべき高大連携:生徒・学生が『持続可能な社会の創り手』 となるために 京都高大連携研究協議会
溝上 慎一(2026).課題の設定から始める総合的な探究:己の在り方生き方を育てる理論と実践 学びと成長の講話シリーズ 東信堂