Ⅰ. 官僚制
1. 『公共』(東京書籍)
- (単元)内閣のしくみと役割
- 内閣の役割と行政組織
- 行政改革;「1府12省庁」;公務員(官僚):副大臣;大臣政務官
- 行政国家化と行政改革
- 行政国家;官僚制;「天下り」;国家公務員倫理法
- Cf. ウェーバー:合法的支配;形式合理性
- 内閣の役割と行政組織
2. 官僚制の定義と語源
⑴ 定義
- 政策を立案・執行する主体
- 官僚制という制度的特徴をもつ(後述)
国家主権に基づく中央政府と地方政府による統治行為の一部としての官僚制の集団作業(村松岐夫 (1994))
⑵ 語源
- 官僚制の語源
- beaurocracy
- bureau(「机」の意から転じて「オフィス」を指す)
- 接尾辞 cracy(支配)
- 当初の語感「机が支配」する(揶揄として生まれた言葉)だが、のちに、中立的な語彙として用いられるようになる
- Cf.アリスト/クラシー(優秀者/支配);デモス/クラシー(民衆/支配)
- 選挙によって選ばれた者ではない者による支配
- beaurocracy
3. 官僚制の特徴
- 社会学者によって特徴が分析される
- ウェーバー:官僚制の必要不可欠性とその特徴(合理性)
- マートン:官僚制の逆機能
⑴ 組織的特徴
- 階統制
- 指揮命令系統の一元化
- 権限の分割
- 服従義務の範囲の限定
- 決まっていることを決められた通りにこなす
- セクショナリズム(部局割拠主義)
- Cf. 大部屋主義(日本の特徴)
- 専門領域による任用
- 公務員試験:教養試験+専門試験(法律・技術など)
⑵ 業務的特徴と合理性の追求
- 合理性にもとづく効率的な業務遂行
1 「私たちは測定された説明責任の時代、測定された実績に対する報酬の時代に生きており、「透明性」を通じてそれらの測定基準を公表するという美徳を信じている。だが、説明責任を測定基準や透明性と同一視するのは間違っている。説明責任は本来、自分の行為に責任を負うという意味のはずだ。だが、一種の言語的トリックによって、説明責任は標準化された測定を通じて成功を見せつけることに変わっていった。まるで、本当に大事なのは測定できるものだけだとでもいうようだ。しばしば当然のことのように受け止められるもう一つの思い込みが、「説明責任」は実績の測定が公にされること、つまり「透明化」を求めるということ」(ミュラー,ジェリー・Z・松本裕(訳) (2019), p.4)。
2 定量化とは魅力的なものだ。知識を整理して、単純化してくれるからだ。人や組織間で簡単に比較できる数値情報を提供してくれる。だが、この単純化はゆがみにつながる可能性がある。何かを比較可能にするというのは往々にして本来の概念、歴史、意味をはぎとってしまうことを意味するからだ。その結果、情報は問題の現実よりも確実で権威あるもののように見える。危険信号や曖昧さ、不確定要素ははぎとられる。特定の知識の体裁を整えるには、数値で表現するのが一番だ(ミュラー,ジェリー・Z・松本裕(訳) (2019), p.25)。「学力格差に関して言えば、目に見える結果の進歩がない場合、継続的な測定に費やされるリソースそのものが、道徳的な熱意のあらわれとなるのだ」(ミュラー,ジェリー・Z・松本裕(訳) (2019), p.100)。
3 「「アマチュアは公表し、官僚は隠匿する」。イアン・ハッキング『偶然を飼いならす』(木鐸社、4860円)のこの言い回しは、王の寵臣(ちょうしん)たちが集まる秘密の場所=官房における国家機密と、データをかき集めて推計するアマチュアの知の双方が、近代統計学の源泉となったことを鮮やかに描いている」(重田園江 (2019))。
4 なぜ統計はこんなにも普及したのか。背景には、日常生活と「国民国家」規模の状況の乖離(かいり)がある。たとえば、日本の景気が前よりいいのか悪いのか、職を得られない人が増えたのか減ったのか、簡単にはわからない。そこで統計データの出番となる。ポーター『数値と客観性』が指摘するとおり、統計は、体感される現実を数値に置き換え「客観化」していく。人びとは数値が実感に合わないと違和感を抱く一方で、数値という根拠にすがって生きている(重田園江 (2019))。
5 「ただ、現在よく知られた統計指標の中には、案外新しいものも多い。竹内啓『歴史と統計学』によるなら、経済政策と統計が結びついたのは、「大衆の時代」である20世紀になってからである。とりわけ、大恐慌による大量失業に取り組むため、数値による政策の裏づけが求められた(ただし、アメリカで月ごとの雇用統計が取られようになるのは1940年である)。これ以降、失業率やGDPといった指標が生まれ、政策とその成果をアピールするのに用いられるようになる。他方で、何をGDPに含めるかに定説はなく、統計的指標は社会文化的に移ろいゆくものともいえる」(重田園江 (2019))。
⑶ レッド・テープと官僚制の逆機能
- レッド・テープ
- 無用な諸規則で人を束縛するというイメージ
- 繁文縟礼はんぶんじょくれい
- 揶揄的な意味での「お役所仕事」
お役所風の形式主義。過度に形式上の手続きを尊重すること。官僚主義。お役所仕事。〔イギリスで赤いテープを使って公文書を縛ったことから〕(『大辞林』)
- 官僚制の逆機能
- 杓子定規
- 煩雑な手続きゆえに、非効率
- 実質合理性の軽視;形式合理性
- ブルシットジョブ(デヴィッド・グレーバー)
- 仕事のための仕事;働いている気になるだけの仕事
- やってる感・頑張っている感
- 点検・評価という名のペーパーワーク(の押し付け)
- 官僚:「高所」からのPowerPointづくり
- 現場:募る負担・負担感
- 例:学校評価によるPDCAサイクル; 高等学校基礎学力テスト(仮称)を活用した高校教育におけるPDCAサイクルの構築; 教育DXに係るKPI 今年度中に確定 指導者用端末100%整備 アセスメント実施ほか; 教員勤務実態調査; 令和6年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果; 教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言); 教育委員会の事務に関する点検評価(埼玉県教育委員会); 教育委員会の点検・評価(令和6年度事務を対象)について(千葉県教育委員会)
- 仕事のための仕事;働いている気になるだけの仕事
⑷ リーディングアサインメント
- 読売新聞「[あすへの考]【現代の労働環境】「無駄な仕事」新自由主義の弊害…社会学者 酒井隆史氏」
- 安達さん;山田さん
⑸ 制約された合理性(ハーバート・サイモン)
- 経営的(アドミニストレイティブ)人間
- 人間は制約された合理性しかもたず、不完全な意思決定しかできない
- Cf. 経済的人間
- 「全知的な」合理性をもつ人間を前提とする
- ➡ 多くの場合、予測が外れ、「想定外」と評する
- 意思決定を行なう際、目的を可能な限り効果的かつ効率的に達成しようと心がける
- 決定の「過程」において、知識、情報、予測能力の限界など、合理性が制約されているために、その意図を完全に実現することはできない
- したがって、その「結果」は不完全である
- したがって、どこで「満足」するか(どこで諦めるか)を問う方が重要である
- ➡ 不完全性を克服するために、権限の分割を試みる
- 決定範囲を狭めることにより、合理性を高める
- Cf. 真渕勝「公共的人間」6
6 官僚は政策エリートの一つである。官僚が「頭が良い」と言われる理由はいくつかあるが、その最たるものは一見、もっともらしい理由をたちどころに思いつく能力にある」(真渕勝 (2012), p.22)
Ⅱ. 日本の官僚制
1. 法律上の公務員の位置づけ
- 国家公務員法第96条
- 国民全体の奉仕者
- 公共の利益のために勤務
- 特定の政党・党派のための奉仕者ではないことを含意
2. キャリア官僚とノンキャリア官僚
- キャリア官僚:全公務員の5%
- 政策立案の主体:ジェネラリスト(頻繁な異動あり)
- ➡︎ 国会答弁や国会議員とのネットワークを重視
- Cf. 国会答弁(ペーパーは官僚が用意):(「霞が関文学」例「検討を加速します」; 逃げ道としての「等」の多用)
- Cf. 「役人学三則」:末弘厳太郎(いずたろう)7
- ノンキャリア官僚
- ロジスティック;スペシャリスト(頻繁な異動なし)
- ➡︎ 技術知・専門知の蓄積
7 「1. いやしくも役人として出世せんとする以上、いかに相手の言うことが条理にかなっていても容易にその前に頭を下げてはいけない。法規を盾に形式的な理屈で押し通し、相手をねじ伏せよ。2. およそ役人たらんとする者は法規を楯にとりて形式的理屈をいう技術を習得することを要す。3. およそ役人たらんとする者は平素より縄張り根性の涵養に努むることを要す」。
3. 最大動員モデル(村松岐夫)
- 前提:国際的に見て圧倒的に少ない公務員数
- Q. 少ない公務員でどう行政サービスを提供、維持するか
- A. 最大動員モデル
- 「目標による能率志向の管理」(村松岐夫 (1994))
- 人的、財政的、その他のリソースを利用する仕組み
⑴ 人事ローテーション
- 補職:「人材」として採用し、必要に応じていろいろな部署に配属
- ジェネラリスト>スペシャリスト
- ➡ 大過なく、如才なく奉職することが求められる
- 事務次官をゴールとする出世スゴロク
- キャリアパス研究「誰が幹部になるのか?」(竹本信介 (2011))
⑵ 「おそい昇進システム」(稲継裕昭)
- 長期間に渡って行われる厳しい昇進競争
- 20年近くほとんど昇進ペースに差がつかない
- 昇進管理において省員への「動機づけ」を重視
- 技能への投資を一層促す
- 中央省庁における個々の政策判断は、課長
- 近年は課長補佐レベルで為されることが多い
4. 教育行政
- 文部科学省 初等中等教育局
- 財務省 主計局
8 「しかし、そこから50年以上がたち、先生の仕事を巡る環境は大きく変化しています。児童・生徒の問題は多様化・複雑化し、親の権利意識も高くなっていますし、夏休みも研修や部活でほとんど休めなくなっています。業務の負担感が大きすぎる状況になっているのです。そうした中で、教員の方々の残業時間も小中の平均で47時間となっていて、**過労死寸前の方もいる状況*になり、どんどん教員志望者が少なくなっていく、いわゆる「教師不足」が大きな問題となっていました。そこで、教職員の方々の業務の見直しや、それに見合った手当の増額が課題となっていたわけです」。「文科省は2019年に「3分類」を設定し、教師がやるべき業務やそうでないものについて方針を出しています。これを見ていただけると、実際の進捗は良くないです。その原因の一つとして自分が考えるのは、「基本的には」や「必ずしも」という留保の言葉が付いているため、日々子供や保護者と向き合う現場ではなかなかその通りの運用ができないという問題があるのではないかという点です」。「例えば、英国では、1998年にトニー・ブレア首相の労働党政権が出した教育現場への通知があります。それまでの英国は教師がかなり福祉的な業務をやっていたのですが、教師が「担うべきではない仕事」という留保なしのネガティブリストを出して、事務職員に業務を移し、結果的に英国の教師は事務負担からかなり解放されたという事例があります。このように明確に、国がトップダウンで強制力を持った仕事のより分けをするのも一案**であると考えました」(「教員給与「上乗せ分」増額と働き方改革 半世紀ぶり法改正の舞台裏」)。
Ⅲ. 明日の授業と宿題
- 行政と政官関係(2); 地方自治(1)
- 2026年2月5日(木)10:25-; 13:00-
- 教室:教育学部棟517多目的ホール
- 宿題:
- 授業の感想:
- 回答先: Google Form
- 締め切り:2026年2月4日(水) 23時59分
- 2限、3限、どちらの内容で書いても問題ありません
- リーディング・アサインメント:
- 文献:「地方創生のモデル」から転落した町、支援競争で疲弊の先に描く姿は / むらおさめ 集落のみとり、余力あるうちに文化・資源を継承 / 人気の移住先は東京近郊だけ?「選ばれる地域」になるための秘密と鍵」
- 回答先:Google Form
- 締め切り:2026年2月4日(水) 23時59分
- ディスカッション2(2月6日3限)の準備(アイデアやメモでよい)
- 授業の感想: