Ⅰ. 前回の振り返り(授業の感想)
- 兼清さん;河田さん;髙坂さん;小松原さん;塩田さん;米江さん
Ⅱ. 地方財政:三割自治論をめぐって
- 三割自治論
- 三割自治論への批判
- 村松岐夫(行政学者)
- 三割自治論は、なぜ「革新自治体」が活躍できたのかを説明できない
- 革新自治体:日本社会党または日本共産党の首長による、福祉医療の拡充、教育施策などを優先した自治体(都市が中心)を指す
- 三割自治論は、なぜ「革新自治体」が活躍できたのかを説明できない
- 中央政府による、地方統制の財政的手段のみが分析対象
- 自治体の業務実態を分析しておらず、「自治」の実態を見ていない
- 村松岐夫(行政学者)
1 「松江市予算 最大1129億円」(読売新聞、2025年2月19日)
2 「島根県の2025年度当初予算案」(山陰中央新報、2025年2月8日)
Ⅲ. 平成の大合併
1. 経緯と趣旨
- 地方分権推進委員会
- 「西尾私案」(西尾勝・行政学、委員長代理)
- 第1次勧告前に、自民党の行政改革推進本部において、機関委任事務を廃止するなら自治体の権限を強化すべきと言われる。西尾は反論するも政治家に押し切られる [^2-1]
- 第2次勧告:地方分権の受け皿となる基礎自治体の体力向上が必要と勧告(1997年)
- 市町村合併特例新法(1999年)
- 市町村の自主的な合併を促すための財政支援策
- 合併特例債(中央政府が7割りを補填= 地方政府は3割の自己負担で、事業が可能)など
- 市町村の自主的な合併を促すための財政支援策
- 自治体の数
- 3,229(1999年4月)➡ 1,718(2026年2月現在)
- 市792;町743;村183 3
- 50.3%に減少
- Cf. 中央政府の目標値:1,000
3 総務省「市町村合併」
2. 平成の大合併の帰結
⑴ メリット
- 分権化に対応した組織機構の充実
- 経営中枢機能が強化された、専門組織・専門職員を置くことができた、職員の政策形成能力が向上した等
- 財政基盤の強化
- 職員総数・人件費を削減できた、公共施設の利用圏域が拡大し、重複整備が避けられた等
- 住民サービスの維持
- 行き詰っていた福祉や子育て支援のサービスを維持・拡充できた等
- 地域イメージの向上
⑵ デメリット
- 行政と住民の距離の拡大
- 周辺部の衰退
- 住民サービスの平準化による個別サービスの低下
3. 合併特例債
- 市町村合併を進めるために国が用意した特別な地方債(借金)
- 借金の返済額の約7割が地方交付税で補填するため、自治体負担は約3割
- 新しい庁舎の建設だけでなく、合併記念事業なども認められた
- 事例
- 尾道市:十分な議論なく、限度額いっぱいに合併特例債を発行 4
- 高松市「南部地域スポーツ施設」 5
- 島根県「島根15市町、発行総額2526億円 データで見る合併特例債 庁舎や学校、大型整備に充当 未来描けるか 平成の大合併から20年」(山陰中央新報、2025年2月26日)
- ➡︎ 「毒饅頭」:一見、魅力的に見えるが、維持費や人口減少そのものを止める手立てではない
- 分析:加茂利男(政治学、合併から5年後の研究)
- ほとんどの自治体で限度額いっぱいの特例債を発行
- 短期膨張・長期急縮の危険性を指摘 6
4 「この巨額な事業費の95%は、合併特例債で国が7割の負担をしてくれるので、尾道市は3割負担で済む。だから合併特例債は目いっぱい使わねば損だと発想しているようだ。事実、合併特例債を適用させることを最優先課題とし、諮問された尾道市庁舎整備検討委員会では、審議検討するには不十分な提出データ量のなかで、2013年7月から2014年1月の間、たった5回の委員会開催をもって、強引に尾道市が考える「公会堂を解体した跡地に新築する」案を誘導している。その委員会での検討内容を伝える[尾道市庁舎整備検討委員会議事録]を読めば、一目瞭然である」(日本政策投資銀行(2013)「合併市町村が直面する財政上の課題:失われる交付税9千億円、迫り来る公共施設老朽化」)
5 KSB瀬戸内海放送 「検証 平成の大合併①合併するかしないか 地域の決断と今」; 「検証・平成の大合併②公共施設をめぐるアメとジレンマ」
6 ほとんどの新自治体が合併特例債を限度いっぱい使い、議員の在任特例を適用し、議員報酬は高い方に合わせ、住民サービスや公共料金は当面従来どおり、としていることもアンケートでわかった。これでは過渡的には財政膨張となり、財政支援策が切れる合併から15年後には歳入が激減することになる。財政支援策にのって「当面の実利」を取ったのだろうが、「短期膨張・長期急縮」の財政となる可能性が高い(加茂利男・政治学)。
4. 平成の大合併のその後
- 合併によって自治体の行政コストを縮小し、かつ「体力」を向上させる効果は限定的
- 連携中枢都市構想
- 平成の大合併によって弱体化した市町村を支えるため、地域内の(相対的に大きな)自治体の権限と予算の強化を図る
- 認定条件
- 政令指定都市又は中核市
- 昼夜間人口比率おおむね1以上(昼間人口 ≧ 夜間人口)
- 三大都市圏の区域外に所在すること など
- 例:広島広域都市圏 7
- 浜田市;出雲市;益田市;飯南町;川本町;美郷町;邑南町;吉賀町;出雲市;益田市;吉賀町
- ➡︎ 医療、雇用、交通、行政機能が中枢都市に集約される一方で、周辺の自治能力が痩せる可能性あり
7 島根県庁「連携中枢都市圏構想」; 広島県庁「広島広域都市圏発展ビジョン」 - Cf. 定住自立圏構想;広域連携クラスター
5. 自治体戦略2040構想
- 自治体戦略2040構想研究会
- 2040年の日本社会を予想して(バックキャスト)、逆算的に、今、何をすべきかを考える
- 2040年は日本の高齢者人口がピークに達する年
- 検討課題
- 2040 年頃の自治体が抱える課題の整理
- 住み働き、新たな価値を生み出す場である自治体の多様性を高める方策
- 自治体の行政経営改革、圏域マネジメントのあり方
- 第二次報告
- 基礎自治体単位での行政から、圏域単位への行政へ
- 自治体独自の業務プロセスやシステムを共通化
- AIなどの技術革新を通じた「スマート自治体への転換」
Ⅳ. 地方創生政策
1. リーディングアサインメント
- ゆり・金井利之「地方創生をやめてくれて良かった」!?【東大法学部教授を推薦生が直撃】
- 大石さん 尾﨑さん;髙尾さん;西田さん;福田さん;山田さん
- 朝日新聞「地方創生のモデル」から転落した町、支援競争で疲弊の先に描く姿は/ むらおさめ集落のみとり、余力あるうちに文化・資源を継承/ 人気の移住先は東京近郊だけ?「選ばれる地域」になるための秘密と鍵
- 市場さん;内坂さん;尾﨑さん;河田さん;髙尾さん;冨谷さん;山田さん
2. 地方創生政策
- 地方分権改革後の中央政府による地方政府への関与
- 所管官庁:内閣官房・内閣府所管
- 目標
- 東京一極集中の是正
- 地方の人口減少の改善
- 参加は任意だが、地方版総合戦略の策定の義務を負う
- 小さな地方政府にとっては戦略書作成は重荷、東京のコンサルタント会社が大きな利益を得る
- Cf. 東京新聞「地方創生計画 外注多数 交付21億円超 都内企業へ」(2019年1月3日)
- 小さな地方政府にとっては戦略書作成は重荷、東京のコンサルタント会社が大きな利益を得る
3. 地方創生政策への批判
- 競争的性格
- 自治体間競争(人口の奪い合い=ゼロサムゲーム)
- 採択分野に偏り
- 観光振興;移住定住促進;商品開発・販売;高齢者住宅
- 従来の地域活性化政策と代わらず
- 成果目標(KPI= Key Performance Indicator)
- 形式合理性;杜撰な数値目標;言われたからやっているだけ