Ⅰ. 前回の振り返り(授業の感想)
- 内坂さん;河田さん;塩田さん;泉水さん;長谷川さん;山田さん
Ⅱ. 日本の選挙制度と議会
1.(補足)小選挙区比例代表並立制
- 小選挙区と比例代表制をつなぐ比例復活制
- 小選挙区の一般的特徴
- 小政党の勝利困難→小選挙区に立候補せず
- 比例復活制
- 比例票の掘り起こし→小政党も小選挙区に立候補
- 勝利できなくとも、知名度を上げることができる
- 選挙カー;ポスター;政権放送
- Cf. 単純接触効果
- 勝利できなくとも、知名度を上げることができる
- 惜敗率が低くても、比例復活可能 1
- 比例票の掘り起こし→小政党も小選挙区に立候補
- 小選挙区の一般的特徴
- 衆院選2024 石川1区(金沢市)の例
- 衆院選2024 石川1区(金沢市)
- 自由民主党候補 64,997票(36.3%):小選挙区当選
- 立憲民主党候補 51,506票(28.7%):小選挙区落選;比例落選
- 国民民主党候補 24,324票(13.6%):小選挙区落選;比例当選
- 衆院選2026 石川1区(金沢市)
- 立憲民主党候補
- 中道改革連合から公認を得られず、立候補辞退
- (勧められた石川2区から立候補する道を選ばす)
- 立憲民主党候補
- 衆院選2024 石川1区(金沢市)
- ポイント | ドント方式
- 北陸信越ブロックの国民民主党の立候補者数が少なかったため
- 北陸信越ブロック得票数(得票率)
- 立憲民主党:818,773票(25.11%)
- 国民民主党:341,114票(10.46%)
1 川人貞史「まずは、国民に納得感がない個別課題から対応することが求められる。小選挙区で落選した候補が比例選で復活できる現行制度に、違和感がある有権者は多いだろう。すでに提案されている惜敗率に一定以上のラインの設置や、復活当選の議員数の制限など基準を厳しくすることも検討すべきだ」(「視座 26 | 衆院選定数削減 国民の視点で…」 読売新聞、2026年01月24日)
2. 参議院
- 選挙区選挙(朝日新聞「参院選 開票速報」)
- 地方:一人区
- すべての都道府県において最低限の議席が保障されている(人口の少ない地方でも人口に比べて議席数が相対的に多い。2議席。改選議席数は1議席)
- 当選には高い得票率が必要=広い支持を集める戦略を要す
- 都市:複数人区
- 相対的に低い得票率でも当選可能=狭い支持を集める戦略を要す
- 与党も野党も「分け合う」形になりやすい
- ➡︎ 同じ選挙制度にもかかわらず、異なる民意が集約される
- ➡︎ 一人区(地方)での勝敗が選挙全体の勝敗を決する
- 地方:一人区
- 比例代表制:全国区
3. 日本の選挙制度の特徴
- 頻繁な国政選挙
- 衆議院議員の任期:4年(解散あり);参議院議員の任期:6年(3年ごとに半数改選) )
- 平均、2〜3年ごとに国政選挙がある
- 他の国に比べて多い(安定的な政権が生まれにくい要因の一つ)
- Cf. 上院議員は有権者の直接選挙によらない制度を採用する国も少なくない
- 衆議院と参議院の整合性
- 選挙制度改革を行なった衆議院と、放置されている参議院
- それぞれの院で、どのような民意を調達するのか、それを議会でどう活かすのか(衆議院と参議院の役割分担)の議論不在
- 衆議院:都市の有権者が好む改革
- 参議院:衆議院の改革に抵抗
- 典型的事例:2010年の参議院選挙
- TPP問題に関する、衆議院の民意と、参議院の民意の差
- ➡ 一つの政党内に、2つの民意の受け皿ができる(「参議院のドン」)
- ➡ 統合が困難に(砂原庸介 (2015), pp.129–135)
- 典型的事例:2010年の参議院選挙
Ⅲ. 政治意識
1. マスメディア
⑴ 選挙サイト
- NHK「選挙WEB」
- 朝日新聞「衆議院」
- NHK「 衆議院選挙2026特設サイト」
⑵ 世論調査
- 読売新聞
- 朝日新聞
- Cf. 産経新聞の不正操作
2. 政治意識:帰属意識と有効性感覚
- 政治意識
- 政治的なことがらに対する心理的な態度、意見、選好
- 政権支持;政党支持;政策支持
- ただし、多くの人は、大きな政治争点がなければ、明確な政治意識をもたない
- Cf. 新聞社の世論調査
- 政治的なことがらに対する心理的な態度、意見、選好
- ヒューリスティック処理
- (政治に限らず)人は意思決定に際して考慮すべき情報を少なくしようとする傾向にある(認知的倹約家);認知的不協和を回避しようとする(自らの認知と矛盾する情報を回避する)
- Cf. 投票コスト;政党ラベル;「悪夢の民主党政権」
- 新しい事態やこれまでの判断に確信をもてない場合や、余裕があるときに、システマティック処理を行う(別の意思決定を探索しようとする)
- 「われわれはたいていの場合、見てから定義しないで、定義してから見る」(リップマン『世論』)
- (政治に限らず)人は意思決定に際して考慮すべき情報を少なくしようとする傾向にある(認知的倹約家);認知的不協和を回避しようとする(自らの認知と矛盾する情報を回避する)
- 政党帰属意識
- 特殊アメリカ的;変化しにくい;世代間継承
- Cf. 日本においては「帰属」ではなく「支持」を尋ねる
- 政治的有効性感覚
- 自分の一票が政治を動かすという感覚
- 内的有効性感覚:自分たちが政治に働きかければ、それだけの効果はある
- 外的有効性感覚:政治家や政党、国会などが自分たちの気持ちに応えてくれる
- 有効性感覚の低さ ➡ 政治的無疎外感へ
- 政治的疎外感
- 政治はエリートのもの;素人の自分が口を出してもムダ
- ➡︎ 投票率の低下を招くだけでなく、民主主義そのものを弱体化
- 自分の一票が政治を動かすという感覚
3. 日本の若い世代の政治意識
⑴ 政党ラベルについての認識の変化
- 遠藤晶久 (2024)
- シルバーデモクラシー(高齢者と若年層の意見対立)は確認できない
- 政党ラベル(政党のイメージ)
- 冷戦期の対立軸
- 保守:自由民主党;革新:日本社会党
- ➡ 一貫性のある政策パッケージを提供
- ➡ 政治ラベル(政党のイメージを端的に示す)として機能
- 冷戦崩壊以降、対立軸が曖昧に
- 何を保守するのか/何を革新するのか不明瞭に
- 政党ラベル(党名の意味)も曖昧に
- ➡ 世代間で異なる政党ラベルのイメージ
- 保守・革新の理解:「現状を守るのか変えるのか」という観点で評価
- 例)保守=日本共産党;革新=日本維新の会
- 調査時点(2012年)において、40歳以下の有権者に広く見られる現象(冷戦崩壊によってイデオロギー理解に断絶が生じた可能性あり)2
- ➡︎ 有権者は政党ラベルに頼ることができず、投票コストが増大(苅谷)
- 冷戦期の対立軸
2 「55年体制下の自民党と社会党との政策の違いはかなり明確であったが、それに比べると2000年代の自民党と民主党の政策の違いを見分けるのはずっと難しくなった。このことは、55年体制下で政治的社会化を経験する若者よりも、2000年代に政治的社会化を経験する若者の方が、政治的対立を理解するときに難易度の高い課題に直面したことを意味する」(遠藤晶久 (2024))
⑵ 高校生の政治意識(有効性感覚)
- 石橋章市朗 (2010)
- 目的:政治参加の動機と関わる政治的有効性感覚に影響を及ぼす諸要因の解明
- 調査:大阪府吹田市の高校生を対象に実施した政治的態度についての調査
- 結果:
- 政治的有効性感覚の形成
- 性別:家族;マスメディア
- 個々人がすでに内面化している政治的態度ないしは先有傾向
- 有効性感覚
- 外的有効性感覚:比較的強い
- 内的有効性感覚:弱い
- ➡︎ 「政治に多くの事柄を委任し、政治参加を回避しようとする傾向がある」3(石橋章市朗 (2010), p.79)
- 政治的有効性感覚の形成
3 「〔以下に示す〕調査結果によれば、応答性に対する期待を示す「選挙があるからこそ有権者の声が反映されるようになる」については、59%の回答者がこれを肯定している。なお27%の回答者が「わからない」「無回答」を選択しているが、もし学校で習った記述内容を無自覚的に受け入れていればこの意見を肯定したはずである。つまり、教科書の内容と現実との間に矛盾を感じている者が一定数いるということである。「政治や政府は、あまりに複雑なので、自分には何をやっているのか良く理解できない」は、政治に対する理解力についての自己評価を尋ねたものであり、この意見を肯定していれば内的有効性感覚が弱いと判断される。回答者の65%がこれを肯定していることから内的有効性感覚は全体として弱いとみてよいだろう。回答者たちは政治に不信を感じながらも外的有効性感覚が比較的強く、内的有効性感覚が弱いことから、政治に多くの事柄を委任し、政治参加を回避しようとする傾向があるといえよう(石橋章市朗 (2010), pp.79–80)」。
⑶ 政治意識の世代比較
4 若年層とそれ以外の人びとの相違は実態としては小さいにもかかわらず、必要以上に若者の能力を低く見積もり、両者の隔たりを強調することはさまざまな問題を生じさせる。若者のなかの自尊心や投票参加への期待が失われるだけでなく、選挙に価値を見出せず、それを無駄と考える傾向も強まる。そのような若年有権者は、投票参加の権思うようになるだろう。これはただの杞憂ではなく、現実の問題となっていいても、本章では解説する(善教将大 (2025), pp.174–5)。
- 政治知識の有無
- 年齢によって相違があるものもあれば、ないものもある
- 若年層が知っていることを、若年層以外が知らないこともある(「公民」「公共」で学習するような内容)
- 「見た目」で選ぶ傾向
- 実験:若年層コンジョイント実験
- 実験結果:政治について知らない若年有権者も「政治情報が示されたときは、見た目以上に政策に基づき投票」(善教将大 (2025), p.194)
⑷ 選択的接触論
- 稲増一憲・三浦麻子 (2016)
- 選択的接触論の検証 5
- 選択的接触論(仮説):
- 人は、自らの先有態度に沿う情報に接触し、沿わない情報を回避する傾向にある
- マスメディアへの接触は有権者の態度を補強する効果はもつが、態度を変えるような効果はもたない
- 選択的接触の分類
- 党派性に基づく選択的接触
- メディア内容に対する選好に基づく選択的接触
- ネットメディアの台頭;ネットメディアの特性
- 目的:選好に基づく政治知識・国際知識の差の拡大・縮小に関わるネットメディアの特定
- 独立変数:インターネット上における各サービスの利用
- ポータルサイト;新聞社サイト;ニュースアプリ;2ちゃんねるまとめサイト;Twitter;Facebookの認知や利用頻度、利用形態
- 従属変数:政治・国際ニュース知識を測定するクイズ(正答数)
- 結果:
- 選好に基づく政治知識・国際知識の差の縮小に貢献すると考えられるメディア
- ポータルサイト;新聞社サイト;2ちゃんねるまとめサイト
- 選好に基づく政治知識・国際知識の差を拡大すると考えられるメディア
- ニュースアプリ;Twitter(「知識を獲得できるのは元々ニュースを求める選好を持った人のみ」(稲増一憲・三浦麻子 (2016), p.180))
- 選好に基づく政治知識・国際知識の差の縮小に貢献すると考えられるメディア
5 社会心理学者。主著 稲増一憲 (2022) 。マスメディアがもつ影響力(フレーミング効果:争点をどのような枠組み(フレーム)に基づいて報道するかによって、争点に対する有権者の態度が変わる)について論じられている。 2024年総選挙に際して論じた以下の考察も重要。「米国とは違い、日本の有権者に「大きな政府」か「小さな政府」かと聞いても対立軸は見えてこないのですが、「変化を求めるか否か」「格差を許容するか否か」という問いを立てると、見えなかった対立軸が見えてきます。変化や格差をめぐり現状を許容する「システム正当化」の傾向は、高齢の男性ほど高いのですが、(高齢男性ほど社会的に有利な立場ではない)若い女性や低所得者にも現状を正当化し、投票する傾向があります」(朝日新聞「有権者の「三つの軸」政策に変換できない政党 心理学でみる投票行動」2024年10月20日)