Ⅰ. レポート課題
Ⅱ. 前回の振り返り(授業の感想)
- 大石さん;兼清さん;泉水さん;橋本さん;引地さん;長谷川さん
Ⅲ. 今週のイチオシ記事
- The Economist, ‘Does Japan have a “foreigner problem”?: Yes—but it is not what populist politicians say it is’, 8, Jan, 2026
Since becoming prime minister, Ms Takaichi has proposed tightening the screws on foreigners in the hope of winning voters back to the ldp. Her administration has talked of crackdowns on people who overstay visas, taxes on tourists, restrictions on property purchases and caps on foreign labour. A package of measures may be put forward later this month.
高市首相は就任以来、有権者を自民党に取り戻すため、外国人への締め付け強化を提案してきた。政権はビザの期限切れ滞在者への取り締まり強化、観光客への課税、不動産購入制限、外国人労働者の受け入れ上限設定などを議論している。今月下旬にも一連の対策が打ち出される見込みだ。
Ⅳ. 高市政権と2026年総選挙
- 牧原出 (2025)
- 牧原出(政治学・行政学)1
- 今井さん;尾崎さん;岸さん;髙坂さん;泉水さん;米江さん
- 牧原出コメントプラス「新党は政権に対抗できる勢力に「ならない」69% 朝日世論調査」
- 「紅白見た?で始まり、「高市早苗論」で終わる2時間の座談です #152」(2026年1月7日収録)
- 冨名腰隆(元政治部記者・現ゼネラルエディター補佐)
- 官邸レク(01:25:51)
- 高市首相は小泉首相に似ている?(01:45:15)
- 報道1930 1月19日(月)
- 藤田文武(日本維新の会 共同代表)
- 委員長ポストが野党に取られている
- 委員会の半数以上が野党に取られている
1 主著:『内閣政治と「大蔵省支配」:政治主導の条件』(中央公論新社、2003年);『「安倍一強」の謎』(朝日新聞出版、2016年);『田中耕太郎:闘う司法の確立者、国際法の探究者』(中央公論新社、2022年)。PHP「統治機構改革」研究会 (2019) の編纂にも携わる。牧原出 (2026) は、 牧原出 (2025) の視点をより深めて論じられる。
Ⅴ. 選挙制度
1. 『公共』(東京書籍)
- 単元「私たちの民主政治」
- 無党派層;政治的無関心層;ポピュリズム;(低い投票率;低い有効性感覚)
- 単元「政治参加と選挙」
- 間接民主制の4つの原則
- 普通選挙;平等選挙;秘密選挙;直接選挙
- 選挙制度:小選挙区制;比例代表制
- 「一票の格差」問題
- 間接民主制の4つの原則
- 単元「メディアと世論」
- 世論;世論調査
- 「第四の権力」としてのマスメディア
- インターネット時代の世論
- フェイクニュース;世論の分断化;メディア・リテラシー
- 教科書が想定する望ましい投票行動
- 主権者たる国民は投票に行くべき
- 政策をよく比較して投票するべき
- ➡︎ 政治学(選挙制度論;政治心理学;政治意識論)は、規範(何が望ましいか)ではなく、実証(実際にどう行動しているか)の解明を目指す(「制度が行動を作る」)
- 高い理想像を押し付けることは、返って、若者の投票行動を萎縮させる(低投票率へ)(善教将大 (2025), cp. 6)
- 「十分な知識がない」「十分に考えていない」から、選挙には「行かない」(投票する資格がない、責任をもてない)
2. 選挙制度と民意
- 選挙の役割
- 民意の表出;統治権力の創出
- 選挙制度
- 民意の表出と安定的な統治権力の創出の間のバランス
- 選挙制度は民意をそのまま写す鏡ではなく、プリズム(偏光体)のように屈折させる
- ➡︎ 個々の選挙制度がもつ傾向を把握する必要あり
- 民意の表出と安定的な統治権力の創出の間のバランス
- 投票行動
- 投票参加(turnout):投票に行くか、行かないか;棄権・不参加の要因
- 投票選択(vote choice):どの政党・候補に投票するか; 何を基準に選ぶか
- イシュー・セイリアンス(issue salience 目立つ)
- イシュー(争点)の性格:有権者にとってどれほど「気になる」「目につく」争点か
3. 選挙制度
- 多数代表制
- 相対多数制;絶対多数制
- 選挙区制(定数)
- 1人区(小選挙区);複数人区(中選挙区;大選挙区)
- 投票方式
2 候補者に順位をつけて投票する(第1希望、第2希望…)、当選に必要な票数(クオータ)を超えた票や、落選候補の票が次の候補に移る(移譲される)方式
3 候補者1人にのみ投票し、順位付けや票の移譲は行わない(余剰票や落選候補の票が他候補に移ることはない)。単純に得票順に当選者が決まる方式
- ➡︎ 選挙制度によって候補者(政党)の選挙戦略が異なる
- 1人区=当選ラインが高い:薄く広い支持
- 複数人区=当選ラインが低い:狭く確実な支持
- Cf. 蓮舫氏の都知事選挙敗北(参議院東京選挙区と都知事選の当選ラインの違い)
- Cf. 衆議院議員選挙は、かつて、中選挙区制(定数2〜5)と単記非移譲式投票を組み合わせた選挙制度が採用されていた4
4 1994年の公職選挙法改正以前、小選挙区比例代表並立制が導入されるまで採用されていた選挙制度。定数は原則3〜5。最大野党の日本社会党は過半数を超える候補を擁立しなかった(憲法改正を阻止できるだけの議席数で満足していた)。一方で、与党である自民党候補者は同じ選挙区で複数立候補するため、同じ政党内で競争、競合した。派閥政治(金権政治)の大きな要因であり、党内差別化のために「族議員」が生まれた。派閥による疑似政権交替も大きな特徴
⑵ 比例代表制
- 政党の得票率と議席率をできるだけ一致させる制度
- 政党名簿型
- 拘束名簿式;非拘束名簿式
- 候補者中心型
- 単記移譲式投票(STV)
- Cf. 衆議院、参議院ともに名簿式の非拘束比例代表制を採る
- 衆議院の比例区:11ブロック(地域)
- 参議院の比例区:全国区
⑶ 混合制
- 混合並立制;混合併用制
4. 投票選択:投票先を選ぶ際の基準
⑴ 投票の「判断基準」
- 争点投票:政策・イシューを重視5
- 政党投票:政党イメージ(イデオロギー;政党ラベル);支持政党;議会内の勢力バランス
- 個人投票:候補者特性(世襲、知名度、性別、年齢、外見……);親近感;利益誘導
- 業績評価投票:過去の実績(政府・政党・政治家)
- 投票コスト
- 争点投票 > 政党投票 > 個人投票 > 業績評価投票
- 争点投票 > 政党投票 > 業績評価投票 > 個人投票
- ➡︎ 教科書では、争点投票が当然の投票行動のように説明されているが、もっとも負担が大きい投票行動であるという留意が抜けている (「合理的無知」)
- ➡︎ 有権者の実際の投票行動は争点投票にもとづいてはいない6
5 争点投票の要件:1. 有権者が選挙の対立軸となっている争点をきちんと知っていること 2. その争点に対して有権者が、自身の政策的立場を明示できること 3. 候補者が、当該争点に対して、明確なスタンスを表明していること(善教将大 (2025), p.218)
6 「言い換えると、多くの有権者は、細かな政治や制度に関する事実については把握していない。有権者は曖昧なかたちでしか政治を理解していないからこそ、第5章で述べたように、党派性など簡便な手がかりを用いて政治に関する意思決定を行っているのである」(善教将大 (2025), p.183)。「広く称賛された「マニフェスト選挙」の到来にもかかわらず、選挙公約が投票行動に及ぼす影響は依然として最小限である。二大政党の政策綱領にほとんど差異がないだけでなく、候補者が提示する類似した政策選択肢は有権者の政策課題に対する態度をほとんど反映していない」(小林良彰 (2006) 英語要旨──筆者訳)。「政治的無知は、有権者が政策課題への態度と投票決定を結びつけることを妨げる。政治的知識が乏しい有権者は、投票時に過去の生活実態評価に依存する傾向がある」(今井亮佑 (2008) 英語要旨──筆者訳)「分析の結果、まず政治的知識と投票行動という2変数間の関係について、政治的知識レヴェルの低い人ほど自民党(候補)に投票する確率が有意に高いという傾向が、2003年総選挙でも2005年総選挙でも見られた。さらに、投票行動を説明する各要因の規定力が、どの程度政治について知っているかによって異なるという、政治的知識量の「条件付け効果」の存在が確認された」(今井亮佑 (2008), p.298)
⑵ 投票の「選び方」
- 誠実投票:もっとも支持する選択肢に投票
- 戦略投票:死票回避・当落を考慮して投票
- 「戦略/誠実」は他の投票と排他的ではない
- 例:争点はA党支持だが、勝てそうなB党に戦略投票
5. イシュー・セイリアンス
- 選挙の争点になりやすい/なりにくい政策領域
⑴ イシュー・ロー・セイリアンス(低顕在性)
- 政策に関する専門性が高く、生活との距離が見えにくいため、多くの有権者の関心が低い
- その結果、政治家も積極的に論じにくい(票につながりにくい)
- 例:被害者遺族;皇室制度;がん対策
⑵ イシュー・ハイ・セイリアンス(高顕在性)
- 身近で分かりやすく、感情にも訴えやすいため、多くの有権者の関心が高い
- その結果、政治家も選挙で積極的に取り上げやすい(票につながりやすい)
- 例:外国人問題(「シカさんをいじめるな!」);消費税
⑶ 選挙制度とセイリアンス
- 選挙は多くの政策を一票にまとめて判断する仕組み
- ➡︎ 分かりやすく注目されやすい争点が強調され、専門的で目立ちにくい重要な問題は、 有権者が十分に知らないまま決められてしまう可能性がある点に注意
- ➡︎ 選挙で争点となっていない諸問題は、誰によってどう決められているのか
Ⅵ. 日本の選挙制度と議会
1. 衆議院
⑴ 選挙制度:小選挙区比例代表並立制
- 「1人を選ぶ選挙」と「政党を選ぶ選挙」を同時に行う仕組み
- 小選挙区:候補者に1票;大政党に有利;死票が生じやすい
- 政権を安定させやすい(求心力が働きやすい)
- 1票の価値
- 最大:北海道3区 460,770人
- 最小:鳥取1区 229,371人(較差:2.032倍)7
- 比例代表:政党に1票;小政党に有利;政党の得票率に近い形で議席が配分される
- 多様な意見も議会に反映される(遠心力が働きやすい)
7 総務省「選挙人名簿及び在外選挙人名簿登録者数(令和5年9月1日現在) に基づく試算結果の概要」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000933099.pdf)
⑵ 小選挙区制(比例代表制)導入時の期待
- 金権政治からの脱却
- 強いリーダーシップ
- 政権選択(候補者選択から政党選択へ)二大政党による政権交代」を想定
- 「政党枠組み、政策体系、首相候補」の三位一体
- 政党助成金
⑶ 小選挙区制(比例代表制)の効果
- 派閥中心から政党中心への移行に成功
- 例:選挙の公認権(自民党:幹事長)
- 政策決定の集中化に失敗
- 「選挙制度の規定力はかなり弱い」(濱本真輔 (2019))
- 首相(党首)の指導力に依存
- 強い党首:小泉首相;安倍首相
- 弱い党首:菅首相;岸田首相;石破首相;高市首相(?)
⑷ 小選挙区比例代表並立制の現在地
- 二大政党を基軸とする政権交代は例外的
- 2009年の民主党政権(鳩山内閣);2012年の自由民主党(第2次安倍内閣)
- 比例代表制は他党化を誘発し8、第3極の台頭と退潮(消滅)を繰り返す
- 小選挙区(295区)に候補者を立てられる政党は限られる(候補者;資金力;スタッフ)
- ➡︎ 当選の見込みはなくとも小選挙区に立候補した方が知名度が上がる(比例票が増える)
- ➡︎ 第3極の政党は、政権を単独で奪取することよりも、与党と野党の間で「キャスティング・ボート」(casting vote)を握る戦略を取ることが多い(いわゆる「ゆ党」)。小さなコストで大きな影響力を行使できる(大政党のような責任も問われない)
- マスメディアや世論は「党勢」を重視するが、議会においてはなお絶対数が重要(有権者の「見え方」と「実際の力」にズレあり)
8 「(今井貴子)制度の内側から多党化を誘発する構造になっていました。平成の政治改革は「二大政党による政権交代」を想定していました。ところが実際には、勝っている側には求心力が、負けている側には分裂して比例で生き残るインセンティブが働きやすい仕組みです。例えば民主党分裂後、国民民主党などいくつもの新党が比例を足場に政党として残ってきました」「だからこそ、現実的には「今ある制度をどう運用するか」を考えることになります。多数決型であれば、与野党間のほぼ互角の競争を通じて政権交代の可能性が確保されるはずでした。しかし日本では、これまで一貫して非対称な状況が続き、そのうえ政党交付金や比例枠の仕組みが重なった結果、政党システム全体に遠心力がかかってしまった。となると、必要なのは制度を作り直すことよりも、現実に合わせて制度運用のルールを整えることです。多数決型に向かうにせよ、合意型に近づけるにせよ、いずれにも野党に特化した支援制度や透明性の確保といった固有のルールがあるはずですが、十分に整備されてこなかった。そうして築かれた経路によって、制度がうまく噛み合わなくなっているのだと思います」「(待鳥聡史)まったくそのとおりですね。にもかかわらず、去年あたりから、「多党化すれば合意形成型の熟議の国会になる」といった議論をずいぶん目にしています。これも相当に甘い感じがあって、実現させようと思ったら、相当な制度改革と運用の転換が必要になる。例えば、多党制による合意形成型方式に近づけようとすると、本来は法案ごとに頻繁な修正が必要になります。ところが日本の国会は、省庁と与党の事前審査で法案がほぼ固まり、野党の批判はあっても多くの法案がそのまま通る前提で人員や時間が配分されています。つまり、合意形成型に移行するには、この前提となっているリソース配分自体を根本から作り直さなければなりません」(待鳥聡史・今井貴子・境家史郎 (2025))。
⑸ 得票率と議席占有率
- 2017年総選挙(安倍内閣)
- 投票率:53.68%
- 自民党得票率:48.2%
- 自民党小選挙区議席占有率:74%
- ➡ 得票率より議席占有率が約2.4倍に増幅(小選挙区制(勝者総取り)の効果)
- ➡ 投票率を加味すれば、自民党に投票した有権者:25%
- 2021年総選挙(岸田内閣)
- 投票率:55.93%
- 自民党得票率:48.4%;自民党小選挙区議席占有率:65.4%
- ➡ 得票率より議席占有率が約2.7倍に増幅
- ➡ 投票率を加味すれば、自民党に投票した有権者:27.1%
- 2024年総選挙(石破内閣)
- 投票率:53.85%
- 自民党得票率:38.40%;自民党小選挙区議席占有率:64.8%
- ➡ 得票率より議席占有率が約3.1倍に増幅
- ➡ 投票率を加味すれば、自民党に投票した有権者:21%
⑹ 獲得議席数がもつ意味
- 委員長ポストは、各会派の議席数に応じて配分される(法律ではなく長年続く慣行による)
- 委員長の裁量:
- 所属党派から独立した存在(中立)だが9、恣意的な裁量も目立つ
- タイムキーピング;発言者の指名;質疑応答の的確性の判断;委員会秩序の統制;採決のタイミング
- 委員長の裁量:
- 衆議院定数:465議席
- 単純過半数:233議席
- 安定多数:244議席
- 与党が各常任委員会で「最大会派」になることが多く、委員会運営を安定して主導できる
- 絶対安定多数:261議席
- 与党がすべての衆院常任委員会で委員長ポストを独占できる
- 圧倒的多数:310議席
- 与党は参議院で否決された場合の衆議院での法案再可決できる
- その他にできること:憲法改正の発議;秘密会の開催;国会議員の除名
9 朝日新聞「高市氏の発言「敬愛の精神を忘れている」参院予算委員長が注意」「(末松信介予算委員長=自民党)石橋筆頭が来られて色々意見を述べてる。信用できないから質問なさらないでくださいと言うのは表現として全く適切ではないと思っています。閣僚が国会議員の質問する権利について揶揄したり否定するのは本当に大きな間違いであると思うんです」。「政府に入って答弁する方も質問する側も敬愛の精神というものが必要であると思っています」。
2. 参議院
3. 日本の選挙制度の特徴
- 頻繁な国政選挙
- 衆議院議員の任期:4年(解散あり);参議院議員の任期:6年(3年ごとに半数改選) )
- 平均、2〜3年ごとに国政選挙がある
- 他の国に比べて多い(安定的な政権が生まれにくい要因の一つ)
- 衆議院と参議院の整合性
- 選挙制度改革を行なった衆議院と、放置されている参議院
- それぞれの院で、どのような民意を調達するのか、それを議会でどう活かすのか(衆議院と参議院の役割分担)の議論不在
- 衆議院:都市の有権者が好む改革
- 参議院:衆議院の改革に抵抗
- 典型的事例:2010年の参議院選挙
- TPP問題に関する、衆議院の民意と、参議院の民意の差
- ➡ 一つの政党内に、2つの民意の受け皿ができる(「参議院のドン」)
- ➡ 統合が困難に(砂原庸介 (2015), pp.129–135)
- 典型的事例:2010年の参議院選挙
Ⅶ. 政治意識
1. マスメディア
⑴ 選挙サイト
⑵ 世論調査
- 読売新聞
- 朝日新聞
- Cf. 産経新聞の不正操作
2. 政治意識:帰属意識と有効性感覚
- 政治意識
- 政治的なことがらに対する心理的な態度、意見、選好
- 政権支持;政党支持;政策支持
- ただし、多くの人は、大きな政治争点がなければ、明確な意識をもっていない
- Cf. 新聞社の世論調査
- 政治的なことがらに対する心理的な態度、意見、選好
- 政党帰属意識
- 特殊アメリカ的;変化しにくい;世代間継承
- 政治的有効性感覚
- 自分の一票が政治を動かすという感覚
- 内的有効性感覚:自分たちが政治に働きかければ、それだけの効果はある
- 外的有効性感覚:政治家や政党、国会などが自分たちの気持ちに応えてくれる
- 有効性感覚の低さ ➡ 政治的無疎外感へ
- 政治的疎外感
- 政治はエリートのもの;素人の自分が口を出してもムダ
- ➡︎ 投票率の低下を招くだけでなく、民主主義そのものを弱体化
- 自分の一票が政治を動かすという感覚
3. 日本の若い世代の政治意識
⑴ 政党ラベルについての認識の変化
- 遠藤晶久 (2024)
- シルバーデモクラシー(高齢者と若年層の意見対立)は確認できない
- 政党ラベル(政党のイメージ)
- 冷戦期の対立軸
- 保守:自由民主党;革新:日本社会党
- ➡ 一貫性のある政策パッケージを提供
- ➡ 政治ラベル(政党のイメージを端的に示す)として機能
- 冷戦崩壊以降、対立軸が曖昧に
- 何を保守するのか/何を革新するのか不明瞭に
- 政党ラベル(党名の意味)も曖昧に
- ➡ 世代間で異なる政党ラベルのイメージ
- 保守・革新の理解:「現状を守るのか変えるのか」という観点で評価
- 例)保守=日本共産党;革新=日本維新の会
- 調査時点(2012年)において、40歳以下の有権者に広く見られる現象(冷戦崩壊によってイデオロギー理解に断絶が生じた可能性あり)10
- ➡︎ 有権者は政党ラベルに頼ることができず、投票コストが増大(苅谷)
- 冷戦期の対立軸
10 「55年体制下の自民党と社会党との政策の違いはかなり明確であったが、それに比べると2000年代の自民党と民主党の政策の違いを見分けるのはずっと難しくなった。このことは、55年体制下で政治的社会化を経験する若者よりも、2000年代に政治的社会化を経験する若者の方が、政治的対立を理解するときに難易度の高い課題に直面したことを意味する」(遠藤晶久 (2024))
⑵ 高校生の政治意識(有効性感覚)
- 石橋章市朗 (2010)
- 目的:政治参加の動機と関わる政治的有効性感覚に影響を及ぼす諸要因の解明
- 調査:大阪府吹田市の高校生を対象に実施した政治的態度についての調査
- 結果:
- 政治的有効性感覚の形成
- 性別:家族;マスメディア
- 個々人がすでに内面化している政治的態度ないしは先有傾向
- 有効性感覚
- 外的有効性感覚:比較的強い
- 内的有効性感覚:弱い
- ➡︎ 「政治に多くの事柄を委任し、政治参加を回避しようとする傾向がある」11(石橋章市朗 (2010), p.79)
- 政治的有効性感覚の形成
11 「〔以下に示す〕調査結果によれば、応答性に対する期待を示す「選挙があるからこそ有権者の声が反映されるようになる」については、59%の回答者がこれを肯定している。なお27%の回答者が「わからない」「無回答」を選択しているが、もし学校で習った記述内容を無自覚的に受け入れていればこの意見を肯定したはずである。つまり、教科書の内容と現実との間に矛盾を感じている者が一定数いるということである。「政治や政府は、あまりに複雑なので、自分には何をやっているのか良く理解できない」は、政治に対する理解力についての自己評価を尋ねたものであり、この意見を肯定していれば内的有効性感覚が弱いと判断される。回答者の65%がこれを肯定していることから内的有効性感覚は全体として弱いとみてよいだろう。回答者たちは政治に不信を感じながらも外的有効性感覚が比較的強く、内的有効性感覚が弱いことから、政治に多くの事柄を委任し、政治参加を回避しようとする傾向があるといえよう(石橋章市朗 (2010), pp.79–80)」。
⑶ 政治意識の世代比較
12 若年層とそれ以外の人びとの相違は実態としては小さいにもかかわらず、必要以上に若者の能力を低く見積もり、両者の隔たりを強調することはさまざまな問題を生じさせる。若者のなかの自尊心や投票参加への期待が失われるだけでなく、選挙に価値を見出せず、それを無駄と考える傾向も強まる。そのような若年有権者は、投票参加の権思うようになるだろう。これはただの杞憂ではなく、現実の問題となっていいても、本章では解説する(善教将大 (2025), pp.174–5)。
- 政治知識の有無
- 年齢によって相違があるものもあれば、ないものもある
- 若年層が知っていることを、若年層以外が知らないこともある(「公民」「公共」で学習するような内容)
- 「見た目」で選ぶ傾向
- 実験:若年層コンジョイント実験
- 実験結果:政治について知らない若年有権者も「政治情報が示されたときは、見た目以上に政策に基づき投票」(善教将大 (2025), p.194)
⑷ 選択的接触論
- 稲増一憲・三浦麻子 (2016)
- 選択的接触論の検証 13
- 選択的接触論(仮説):
- 人は、自らの先有態度に沿う情報に接触し、沿わない情報を回避する傾向にある
- マスメディアへの接触は有権者の態度を補強する効果はもつが、態度を変えるような効果はもたない
- 選択的接触の分類
- 党派性に基づく選択的接触
- メディア内容に対する選好に基づく選択的接触
- ネットメディアの台頭;ネットメディアの特性
- 目的:選好に基づく政治知識・国際知識の差の拡大・縮小に関わるネットメディアの特定
- 独立変数:インターネット上における各サービスの利用
- ポータルサイト;新聞社サイト;ニュースアプリ;2ちゃんねるまとめサイト;Twitter;Facebookの認知や利用頻度、利用形態
- 従属変数:政治・国際ニュース知識を測定するクイズ(正答数)
- 結果:
- 選好に基づく政治知識・国際知識の差の縮小に貢献すると考えられるメディア
- ポータルサイト;新聞社サイト;2ちゃんねるまとめサイト
- 選好に基づく政治知識・国際知識の差を拡大すると考えられるメディア
- ニュースアプリ;Twitter(「知識を獲得できるのは元々ニュースを求める選好を持った人のみ」(稲増一憲・三浦麻子 (2016), p.180))
- 選好に基づく政治知識・国際知識の差の縮小に貢献すると考えられるメディア
13 社会心理学者。主著 稲増一憲 (2022) 。マスメディアがもつ影響力(フレーミング効果:争点をどのような枠組み(フレーム)に基づいて報道するかによって、争点に対する有権者の態度が変わる)について論じられている。 2024年総選挙に際して論じた以下の考察も重要。「米国とは違い、日本の有権者に「大きな政府」か「小さな政府」かと聞いても対立軸は見えてこないのですが、「変化を求めるか否か」「格差を許容するか否か」という問いを立てると、見えなかった対立軸が見えてきます。変化や格差をめぐり現状を許容する「システム正当化」の傾向は、高齢の男性ほど高いのですが、(高齢男性ほど社会的に有利な立場ではない)若い女性や低所得者にも現状を正当化し、投票する傾向があります」(朝日新聞「有権者の「三つの軸」政策に変換できない政党 心理学でみる投票行動」2024年10月20日)
Ⅷ. 次回の授業と宿題
- 次回:民主主義と全体主義 (1)
- 2026年2月2日(10:25-)
- 対面授業:教養棟2号館401教室
- 宿題:
- 授業の感想:
- 回答先: Google Form
- 締め切り:2026年1月31日(土)23時59分
- リーディング・アサインメント:
- 回答先:Google Form
- 締め切り:2026年1月31日(土)23時59分
- 授業の感想: