政治学概論Ⅰ《2025》

#13 地方自治(1)(前回の積み残し)

苅谷千尋

金沢大学

February 6, 2026

Ⅰ. 前回の振り返り(授業の感想)

授業の感想:行政と政官関係(2)

政官関係に着目した官僚の類型の部分と、組織的類型の部分

単純に官僚という存在をここまで分類することができることに驚いたから。政官関係に着目して分類すると、それぞれが持つ官僚としての意識の持ち方が大きく異なっており、さらに組織的に考えると原局型官僚と官房型官僚に分類することができ、特定の部局に尽くすか全体の調整を行うかという違いがあることを知ってとても印象的だった。これ以外にも分類の仕方があるのか気になった(河田さん)。

授業の感想:行政と政官関係(2)

政官関係におけるハレーション

この事例は、政治主導を掲げる大臣と官僚組織との間で生じた対立を象徴的に表した問題であり、政官関係を具体的に示している点が重要だと感じたため。特に、野上外務次官を更迭するなら幹部全員の辞表提出するといった外務省の対応は、官僚組織が持つ集団的な影響力の強い現れであると同時に、政治と行政の信頼関係が崩れた際に政策を進めていく上での問題点が明らかになった事例であると感じた(髙坂さん)。

授業の感想:行政と政官関係(2)

松下政経塾

現在の政治の要職についている人や要職経験者に松下政経塾の塾生が多くいることが分かった。調べてリストを見た際に、自民党議員の名前が多く目についた。政経塾で学んだリーダーによって官僚のコントロールが上手くいき、官僚主導から政治主導への転換が上手くいっていたのかなと感じた。元明石市長の泉房穂氏の政治手腕も話を聞くとどちらかというと政治主導に近い印象があったので、政治主導でトップダウン型だと政策がスムーズにいくのではないかと感じた(小松原さん)。

授業の感想:地方自治(1)

自治体の取り組み

自治体ごとに、さまざまな取り組みに力を入れ、地域の活性化を図っていることを学んだ。国からの一方的な支援や命令ではなく、自ら地域に合った取り組みを行うことで、地方自治が発達していく点に興味を持った。 子育て支援を行っている地域では、その財源がどこから来ているのか疑問に思ったが、他の支出を削減して子育て支援に回すことで事業を成り立たせ、結果として地域の歳入を大幅に増やすことにつながったという点が、とても印象に残った。初めは地域住民からの反発があるかもしれないけれど、全ての地域が参考にするべき事例だと感じた(兼清さん)。

授業の感想:地方自治(1)

地方分権の限界について

少子高齢化が進む中で地域の担い手不足が深刻な課題となっていることが話題になっていて、東京一極集中と地方からの人口流出によって地域によっては自治体として存続ができなくなる可能性があるのは深刻な問題だなと感じた。私も先日邑南町を訪れてみて人口減少によって起こる様々な問題の実態や新たな移住者を呼び込むための取り組みが行われていることを知ることが出来たので、今回の講義の内容は身近な問題として理解することが出来た(塩田さん)。

授業の感想:地方自治(1)

明石市の子育て支援の取り組み

具体的な政策を提案できる自治体の首長選挙や議員選挙は、国政に比べてプロセスが分かりやすく、有権者にとっても身近なものに感じやすい。そのため市民にとって政策選択としての意味を持つということが納得できたから。自治体によって人口構成や見込める税収は異なるため、政策実現のためには首長の力量が試されると思った。自治体の選挙は自分たちの生活に直結するような政策も多くあるため、候補者が実現したい政策は何なのかしっかりと見極めることが有権者には求められると感じた(米江さん)。

Ⅱ. 中央地方関係

中央地方関係の調整制度

  • 地方分権改革以降、中央政府と地方政府は法律上は対等な関係とされているため、意見が対立した場合でも、中央政府が一方的に命令することはできず、調整が必要となる
  1. 国地方係争処理委員会
  2. 全国知事会
  3. 非常時に国が自治体に必要な指示を出せるようにする地方自治法改正(2024年)

中央地方関係の調整制度

地方自治法改正(2024年)

  • 非常時に国が自治体に必要な指示を出せるようにする
    • 新型コロナウイルス禍を教訓に、非常時に限り、国が地方自治体に対して危機対応について指示できる仕組みを整備
    • 地方分権の流れに逆行すると批判を受ける

中央地方関係の調整制度:地方自治法改正

批判的意見

国と自治体はもう「上下・主従」でなく「対等・協力」な関係のはずだ。(原文改行)分権改革で、国が自治体を下部組織のように指揮して仕事をさせた機関委任事務を廃止し、国が本来果たすべき仕事を委ねる法定受託事務と、それ以外の自治体が担う自治事務に振り分けた。(原文改行)その際に、国による関与は「必要最小限」で、自治体の「自主性・自立性への配慮」が原則だと地方自治法に明記された。今回の答申はこの分権改革に明らかに逆行する」(「(社説)国の指示権拡充 自治への介入を危惧」朝日新聞、2023年11月27日)

非常時に国が自治体に対応を指示できるようにする地方自治法改正案が、参院総務委員会で可決された。本会議で成立する見通し。これまで個別の法律に規定がある場合に行使が限られていた権限を、個別法の根拠がない場合にも広げることが明記された」(朝日新聞「(社説)国の指示権拡大 自治の原則を侵す改悪だ」、2024年6月19日)。

中央地方関係の調整制度:地方自治法改正

肯定的意見

牧原出「その場合、この社説が危惧するように、国が一方的に地方に義務づけることが「対等」という原則を破るものだとは私は言えないと考えています。「対等」であるからこそ、国が指示権を行使しても地方自治体がそれに従わない事態も十分ありうるのです。特にこうした指示権は迅速な行動を求める内容であることが通常でしょうから、地方が従わないことで指示が滞ること事態が国にとっては判断ミスとなり、政権にとっては評判を落とすことが明らかです。その意味では、地方が従うことが見越せるからこそ指示権を行使することになり、であるならば指示権を行使するまでもなく地方がその方針に沿って自発的に行動する可能性が高いとも言えます。合理的に指示権が行使されるとすれば、地方の側で決定できない状況があり、国の指示に従って行動するくらいしかできなくなるといった混乱した状況があるといったことが想定されます」(「(社説)国の指示権拡充 自治への介入を危惧朝日新聞、2023年11月27日)。

Ⅲ. 地方分権の限界:消滅可能性自治体

地方分権の限界

  • 加速化する東京一極集中

総務省が3日公表した、住民基本台帳に基づく2025年の人口移動報告で、東京都は転入者が転出者を6万5219人上回る「転入超過」だった。転入超過の人数は前年より1万4066人減った。転入超過となったのは東京都を含めて7都府県。40道府県で転出超過となった。東京一極集中の傾向が変わらず続いている(「 東京、続く一極集中 転入超過6万5219人 」朝日新聞、2026年2月4日)

地方分権の限界

  • 消滅可能性自治体
    • ➡︎ 中央政府による積極的な介入が必要?
  • 「「東京一極集中」に待った!島根県知事と議論」1
    • 丸山島根県知事「消滅可能性自治体は地方ではなく国の責任!」

    日本全体の問題を自治体の問題であるかのようにすり替えて言われているのは根本的に間違っている

地方分権の限界

(社説)税収格差是正 一体的見直しに知恵を」(朝日新聞、2025年12月24日)

自民党と日本維新の会がまとめた与党税制改正大綱は、東京に本店を構えるインターネット銀行の利子から得られる都の税収を、都道府県間で調整する方針を決定。都に税収が集中する法人事業税の再配分の拡充は2027年度の税制改正で、新たに検討が決まった固定資産税への対応は27年度以降で、ともに「結論を得る」と明記した。

小池百合子都知事は「地方税制の根幹をゆがめ、地方自治を否定する地方税制度の改悪。あらゆる手段で対抗する」と批判した。利子課税は、総務省の第三者機関である国地方係争処理委員会への申し出も検討するという。