#13 地方自治(2)
February 6, 2026
これ〔西尾の反論〕に対して、ある議員が「政治がわかっていないなあ。そんなことを我々が言って再選できると思っているのかね」と言いました。(原文改行)私も負けずに「表と裏を使い分けるから政治はわかりにくい。市町村合併が党の総意なら選挙綱領で明言すべきで、我々に押しつけるのは理解できません」と返したのですが、押し問答になってしまいました。(原文改行)諸井委員長はその後、自分で他の政党を回られたようです。すると、社民党と共産党以外の各政党は合併推進論が強く、これに応じなければ委員会の勧告を法制化してもらえそうもないということでした。……私は、市町村合併の推進を言わなければ委員会の勧告が受け入れられなくなるのか、と無念の思いでした(「時代の証言者 | 地方分権の夢 西尾勝:市町村合併推進に反論」読売新聞、2014年9月30日)
この巨額な事業費の95%は、合併特例債で国が7割の負担をしてくれるので、尾道市は3割負担で済む。だから合併特例債は目いっぱい使わねば損だと発想しているようだ。事実、合併特例債を適用させることを最優先課題とし、諮問された尾道市庁舎整備検討委員会では、審議検討するには不十分な提出データ量のなかで、2013年7月から2014年1月の間、たった5回の委員会開催をもって、強引に尾道市が考える「公会堂を解体した跡地に新築する」案を誘導している。その委員会での検討内容を伝える[尾道市庁舎整備検討委員会議事録]を読めば、一目瞭然である(日本政策投資銀行(2013)「合併市町村が直面する財政上の課題:失われる交付税9千億円、迫り来る公共施設老朽化」)
ほとんどの新自治体が合併特例債を限度いっぱい使い、議員の在任特例を適用し、議員報酬は高い方に合わせ、住民サービスや公共料金は当面従来どおり、としていることもアンケートでわかった。これでは過渡的には財政膨張となり、財政支援策が切れる合併から15年後には歳入が激減することになる。財政支援策にのって「当面の実利」を取ったのだろうが、「短期膨張・長期急縮」の財政となる可能性が高い(加茂利男・政治学)。
日本では東京の一極集中が見られ、戦後は地方出身者が東京で官僚をしていたため、地方にことを知っていたが、今後は東京出身者の官僚が増えていくと知り、地方の声をどのように届かせていくべきなのかという視点が重要になると思ったから。また、もし地方の声が届かないと中山間地域の過疎化や地方の人口流出に拍車が掛かってしまうと思い、危機感を感じたから(大石さん)。
特に印象に残ったのは、地方創生を「ミクロとマクロの取り違え」と批判している点である。各自治体が移住者を奪い合うのは当然だが、国が同じ発想で政策を打つのは誤りだという指摘は、視点の違いの重要性を明確に示していた。また、地域活性化は市場経済の問題であり、行政の役割は生活を維持することだという主張は、これまで抱いていた「自治体が頑張れば地域は良くなる」という考えを揺さぶられた。さらに、都市と地方が生育歴の違いによって互いを理解できなくなっているという分析は、単なる経済問題ではなく、社会的分断の深刻さを示しており、非常に示唆的だと感じた(尾﨑さん)。
私は、高齢化社会がとても進んでいる島根で生まれ育ったので、身近に地方再生などについて考える機会が多かった。そして、地方創生は、地域を救う前向きな政策にだと思っていたが、金井教授が、人口減少というマクロな問題に対して、自治体同士が移住者を奪い合うミクロな対応をしている点を問題視しており、新しい視点を取り入れることができたから。また、国が担うべき人口減少社会への構造的対応を考え直す必要があると感じたから(髙尾さん)。
「地方創生」という言葉はよく聞き、良いことのように考える人が多い中、現実的にはミクロ的に人口を増やそうとすると若者の移住の奪い合いになり、国は、人口が減少していく中でどう対策をとっていくのかという、マクロ的な話をしないといけないはずだという指摘に共感したため。島根大学の作野教授の主張も同じようなもので、作野教授の講義の中でも考える機会があり、これからも考えていきたいと感じた(西田さん)。
学生生活において多くの人と知り合ったが、大抵は山陰や中国地方出身で、いわゆる大都市圏出身の人とはあまり出会わなかった。見返すと、こういった身近なところで既に「異なる人種」化は存在しているのだと実感した。都市圏と地方圏で互いの問題を理解しなければ、問題の解決にはそう簡単にはたどり着けないのだということが分かった(福田さん)。
学問や研究者の進路が「強い使命感」や「社会を変えたいという理想」から必ずしも始まるものではないことを示しているからである。金井先生の語りは、進路選択を過度に崇高なものとして捉えがちな学生の固定観念を崩し、生活感覚や自分の性格に合った選択も十分に正当であることを教えている。そうした現実的な動機が、結果として長く研究を続ける基盤になり得る点は、進路に悩む学生にとって大きな示唆を与える(山田さん)。
環境がいいところに住みたいとか、健康によい食事をして暮らしたい、ジェンダーの視点など、多様な価値観をもって人は移住してくる。もともと住んでいる人が生活を不便に感じていれば、移住してくる人もそのように感じ、逆に住んでいる人が現状に満足していれば、移住者にとっても魅力的な地域となる。移住者ばかりを優遇することは、もともと住んでいる人が不満を持つことにつながり、地域を出てしまう原因にもなる(市場さん)。
この部分を選んだ理由は、数字に注目し、人口減少を問題視して人口の流れを変える政策を考えるようなこれまでの地方創生とは異なり、今いる市民の幸せを人口減少対策の中心に捉えている点が印象に残ったからである。人口増加という結果だけを追うのではなく、市民の声を反映しつつ、市民一人ひとりの幸福を重視する視点は、これからの地方の政治にとって重要であると感じた(内坂さん)。
これまでの地方創生で主流だった「人口増・活性化」という右肩上がりの幻想を排し、「衰退を敗北ではなく『みとり』と捉える」という「むらおさめ」の視点は、非常に誠実で新しい覚悟を与えてくれるものです。「解決策はなく、適応するしかない」という言葉は、感情論を超えた持続可能な形を模索するための、これからの日本に必要な指針であると感じました。 また、移住が単なる「憧れ」から、働き方の変化に伴う「戦略的なライフスタイルの選択」へと変質している点も印象的です。特に近郊エリアの台頭は現代人のリアリズムを反映しており、移住者が地域に持ち込む「多様な幸せのモノサシ」が、画一的な経済価値に代わる新しい社会の豊かさを形作っていく可能性に強い希望を感じたためです(尾﨑さん)。
「地方創生」の方向性が安倍政権の時は人口減少を課題としてそれを阻止することを打ち出した一方で、石破政権では人口減少は前提でありそれによる地方社会の維持を課題として考えそれについての対策を打ち出しており、二つの政権の間には10年間分の社会の変化があり、各政権によって方向性が異なっていることが特に印象的だった。また政党によってはこの「地方創生」に対して推進するものもあれば検証が必要とするなど様々な見解もあり、さらに細かく方向性が異なっていることも印象的だった(河田さん)。
地方創生=人口増加ではないことが明確化された出来事であり、子育て支援を手厚く行っても、高校のその先の進学先がなければ、若者は出るばっかりだし、同じような地域がまた支援を手厚くするため、支援競争に陥る事実が起きているから。子育てのその先の展望まで見通さなければ、定住を増やすのは難しいのだと思ったから(髙尾さん)。
Cf. 若者が激減した地方の大学の使命とは 公立化で揺れる美作大学(朝日新聞、2025年11月13日)
公立化の是非について報告書は、「単なる大学存続の問題として捉えるのではなく、少子高齢化が進み、地域の活力が失われつつある現状において、公立化を『大学を核とした持続可能なまちづくりを実現するための未来への布石』と位置付け、広い視野から総合的に検討すべき課題である」と津山市に提言した。
私は、都心から離れた山間部の町が金銭的な支援で競い合っても「勝てるわけがない」という言葉が一番印象に残った。現在、いろんな地域で子育て支援や移住支援を行っている。しかし、その成果が目に見えて出ている地域をあまり目にしたことがないように思う。また、一時的に成功したとしても、邑南町のように長くは続かない地域も出てくるだろう。私の出身地も人口減少がかなり進んだ地域であり、市がどれだけ金銭的政策を行っても若者の流出や人口減少を止められない現状を見てきたため、とてもこの言葉に共感した(冨谷さん)。
この点が重要だと考える理由は、人口減少や高齢化が進む中で、これまでのようにすべての地域や集落を同じ水準で維持することが現実的ではなくなっているからである。にもかかわらず、「維持」か「放棄」かという極端な議論に陥ると、地域の文化や住民の生活への配慮が欠けてしまう。むらおさめや建設的縮小という考え方は、限られた財政や人材の中で何を守り、何を手放すのかを住民自身が行政とともに考える道筋を示しており、持続可能な自治のあり方を考える上で重要である(山田さん)。