#5 選挙制度と政治意識(前回の積み残し)
February 2, 2026
その理由は、これまで選挙を「民意がそのまま反映される場」だと無意識に捉えていたが、授業を通して選挙制度が民意を取捨選択し、強調や歪みを生み出す仕組みであると理解できたからである。とくに、小選挙区制によって少数の得票が大きな議席差に転化する点や、分かりやすい争点だけが強調される構造は、民主主義の前提を問い直すものだった。投票しないことも含めて、有権者の行動が制度と深く結びついていると知り、選挙をより現実的に捉えられるようになった(山田さん)。
この部分を選んだ理由は、これまで選挙の争点のなりやすさについて深く意識したことはなく、特にイシュー・ロー・セイリアンスの政策は重要であるにもかかわらず、政治家が選挙で大々的に掲げている印象も薄く、自分自身も投票先を検討する際にあまり注目してこなかったと気づいたからである。講義を通じて、選挙制度の下では分かりやすく顕在性の高い争点が強調され、専門的で目立ちにくい問題について、有権者が十分に理解していないまま意思決定が行われるかもしれないという注意点を知ることができたので良かった(内坂さん)。
確かにこれまでの授業内で、選挙において各政党の示す公約や目指す政策を詳しく調べてから比較して結果自身が一番良いと思った政党に投票しましょうという内容で選挙に関して教育をされてきたので、これは投票に関する一見理想的な形を提示されてきただけであり、その投票者の負担の大きさについて特に考慮されてはいなかったのだと感じたから。戦略投票のように、自分の支持する党とはことなる、実際に当選しそうな党に投票することで自分の入れた票がより当選を確実にするという考え方も一つの投票の方法であるのだと適切に伝える必要があると感じた(河田さん)。
衆議院選挙が近づくなかで、最近は投票率の低下が問題であるとして取り上げられることも多く今回の内容は興味深いものだった。政治学では国民は投票にいくべきであるといった規範よりも、実際にどう行動しているかという実証の解明を重要視していて、その中で教科書では争点投票が当たり前かのように重要であると説明されていることが多いが、争点投票は投票コストにおいて最も負担が大きい投票行動であり、この理想を押し付けることはかえって若者の投票行動を委縮させてしまうと説明されていたから。実際に自分も前回の選挙において投票を行ったが立候補者の政権公約を完全に把握していたとは言えないままの投票だったので、本当にその通りだなと感じた(塩田さん)。
高市首相が韓国の首相とドラムで交流をしたり、ニュースで他国の大統領と親しげに話している様子を見ていたので、高市首相は誰とでもコミュニケーションを取れる人であると思っていた。実際は人を誘えなかったり、コミュニケーションを苦手としていると知って驚いた。政治の重荷を1人で負うことはとても負担がかかるし、1人で決めてしまうと、後々周りがついてこなくなることが考えられる。安定した政治を継続的に行っていく為には、コミュニケーションをとることが必要だと思う(泉水さん)。
蓮舫さんが参議院選挙の東京のある選挙区で170万票獲得し一位で当選しているのにかかわらず、都知事選になると同じぐらいの票を取ったとしても当選することはできない点がとても興味深いと感じた。選挙戦に負けたとはいえ、100万人を超える少ないとはいいがたい人かからの支持を得たにも関わらず、選挙区規模が大きくなると当選することができず、100万人の民意が消えたといっても過言ではなく、より多くの人の政治的意見を反映させようと思ったら、都知事選などの大きな選挙区制を変えていく必要があるのかなと感じた(長谷川さん)。
ポイント | ドント方式
まずは、国民に納得感がない個別課題から対応することが求められる。小選挙区で落選した候補が比例選で復活できる現行制度に、違和感がある有権者は多いだろう。すでに提案されている惜敗率に一定以上のラインの設置や、復活当選の議員数の制限など基準を厳しくすることも検討すべきだ(「視座 26衆院選 | 定数削減 国民の視点で… 読売新聞、2026年01月24日)
ヒューリスティック処理と認知の歪み
遠藤(2024)
55年体制下の自民党と社会党との政策の違いはかなり明確であったが、それに比べると2000年代の自民党と民主党の政策の違いを見分けるのはずっと難しくなった。このことは、55年体制下で政治的社会化を経験する若者よりも、2000年代に政治的社会化を経験する若者の方が、政治的対立を理解するときに難易度の高い課題に直面したことを意味する(遠藤 (2024))
〔以下に示す〕調査結果によれば、応答性に対する期待を示す「選挙があるからこそ有権者の声が反映されるようになる」については、59%の回答者がこれを肯定している。なお27%の回答者が「わからない」「無回答」を選択しているが、もし学校で習った記述内容を無自覚的に受け入れていればこの意見を肯定したはずである。つまり、教科書の内容と現実との間に矛盾を感じている者が一定数いるということである。「政治や政府は、あまりに複雑なので、自分には何をやっているのか良く理解できない」は、政治に対する理解力についての自己評価を尋ねたものであり、この意見を肯定していれば内的有効性感覚が弱いと判断される。回答者の65%がこれを肯定していることから内的有効性感覚は全体として弱いとみてよいだろう。回答者たちは政治に不信を感じながらも外的有効性感覚が比較的強く、内的有効性感覚が弱いことから、政治に多くの事柄を委任し、政治参加を回避しようとする傾向があるといえよう(石橋 (2010, pp. 79–80))。
石橋(2010) 78頁 政治的態度
石橋(2010) 82頁 順位相関係数
石橋(2010) 89頁 公民科目の目的の認知
若年層とそれ以外の人びとの相違は実態としては小さいにもかかわらず、必要以上に若者の能力を低く見積もり、両者の隔たりを強調することはさまざまな問題を生じさせる。若者のなかの自尊心や投票参加への期待が失われるだけでなく、選挙に価値を見出せず、それを無駄と考える傾向も強まる。そのような若年有権者は、投票参加の権思うようになるだろう。これはただの杞憂ではなく、現実の問題となっていいても、本章では解説する(善教 (2025, pp. 174–5))。
米国とは違い、日本の有権者に「大きな政府」か「小さな政府」かと聞いても対立軸は見えてこないのですが、「変化を求めるか否か」「格差を許容するか否か」という問いを立てると、見えなかった対立軸が見えてきます。変化や格差をめぐり現状を許容する「システム正当化」の傾向は、高齢の男性ほど高いのですが、(高齢男性ほど社会的に有利な立場ではない)若い女性や低所得者にも現状を正当化し、投票する傾向があります」(朝日新聞「有権者の「三つの軸」政策に変換できない政党 心理学でみる投票行動」2024年10月20日)。