概要
リーディングセミナーでは、近年、⼤学界隈において話題の、⾼校⽣向けに書かれた(または⾼校⽣にも考えて欲しい)、新書や⽂庫を1冊、取り上げ、参加者で読書体験を共有します。
今回は、岡西政典『生物を分けると世界が分かる』(講談社ブルーバックス、2022)を取り上げます。「分けることによって分かる」、この単純な原理は科学的思考の王道です。ですが、この王道を歩むことは簡単ではありません。生物に興味のある人もそうでない人も大学での研究や学びに触れてみましょう。
- 図書は各自、書店や図書館で入手して下さい
日時
- 2025年3月31日(月) 13:30-17:00
会場
- 金沢大学 角間キャンパス
- インキュベーション施設 セミナー室1(1階)
- Google Map
- 公共交通機関(via 北陸鉄道バス)
- バス停(乗り口)
- 金沢駅兼六園口(東口)8番乗り場発 93・94・97金沢大学行き(兼六園下経由)
- バス停(下車):金沢大学自然研前
- インキュベーション施設まで徒歩5分
- 時刻表(北陸鉄道バス 公式サイト)
- バス停(乗り口)
- 北陸鉄道バスを「金沢大学自然研前」で降り、連絡橋(南アカンサスインターフェース)を渡ってください
- 連絡橋を渡ったあとは右手に進んでください。一番奥の建物が会場です
- インキュベーション施設の入り口はわかりにくく、プレートもかかっていません。新学術創成研究機構を目指してください(建物は連結しています)
- 南アカンサスインターフェース(出口)を左手に進むと、もう一つ、連絡橋が出てきます(北アカンサスインターフェイス)。橋を渡った先が、1年生の共通科目、人間社会学域のメインキャンパスです
- 服装の指定はありません
事前課題
- 提出先:Google Form
- 開催日前日(3月30日(日)23時59分)までに、課題に答えてください
- 当日は、事前課題をもとに、参加者で議論し、紹介文を作成します
オンライン
- 接続方法:ZOOM URL
- 13:00から入室可能です
- 13:00から入室可能です
少人数のグループワークです。できるだけビデオオンでご参加下さい
配布資料
リーディングセミナーの開催当日正午を目処に公開します
- レジュメ:
- 追加資料:
アンケート(受講の感想など)
- 提出先:Microsoft Forms
- 明日(4月1日(火)23時59分)までに回答下さい
連絡先
- 担当講師(苅谷): kariyach@staff.kanazawa-u.ac.jp
- 入試課:076-264-6082(平日開催の場合のみ繋がります)
- 当日、体調不良などで急きょ、参加できなくなった場合は、簡単で結構ですので、上記のメールアドレスに連絡下さい
その他
- このプログラムは金沢大学KUGS高大接続プログラム(大学での学び)の対象です
- 特別入試に興味がある方は公式サイトをご覧下さい
紹介文
朱色の箇所が担当教員(苅谷)が加筆修正した箇所です
グループ①:対面参加者3名
あなたはどのように世界を見ているだろうか。分類学を学ぶと世界の見方が変わる。生物学の一種である分類学は、多様な生物を一つの偏った視点ではなく様々な視点をもって分類することで、多くの未知の自然現象を把握し、未来の生物学にも大きな影響を与え得る学問である。
本書は著者の岡西が分類学の基本概念や、歴史、研究手法を紹介しながら、なぜ生物を分類するのか、その意義を説く本だ。また、本書は最新の研究のDNA解析についても述べており、DNA解析によって新たな分類学の見方も生まれたことを教えてくれる。
分ける作業について著者は次のように述べている。「分類学の営みは、私たちに生物の認識という普段は意識しない、しかし重要な恩恵を連綿と与え続けている」。つまり、分類学を通じて普段は意識しない事柄にも着目できる機会を見出だせるということだ。それによって、物事のありがたみを感じることもできる。普段は意識しない生物の多様性を大切にし、それぞれの種の特徴や役割を意識的に理解することは生態系を保つうえでも重要となる。自然と人類の共存を可能にするためにも分類学は大切な学問だ。
分類学はあまり親しみのない学問であるかもしれないが、私たちの日常生活においても視野を広げてくれる可能性があるだろう。様々な視点を持つことでより多くの価値観に触れることができ、現代社会における問題を解決する手助けとなる。
グループ②:オンライン参加者3名
生物に関する本は専門的で難しいだろうと思い、読むことに関してハードルを感じてしまう人がいるかもしれない。しかし、あまり生物に興味がない人でも読みやすく、単に生物のことだけでなく日常生活にも活きることも書いてあるため、生物に興味がある人もない人も気軽に読んでほしい。
地球上で人知れず絶滅している生物が多くいるにもかかわらず、人類は地球のことを分かりきったと思っている。本書ではそんな人類の地球に対しての見方を、分類学を通して確実に変えようとしている。
私たちは日常生活の中で「分ける」という行為をよくしているが、この「分ける」という行為は人類の本能的な活動である。それは古代アリストテレスの時代から何人もの偉人たちによって行われてきた「自然物を分ける」ということにみられる。過去の偉人も現代人と同じように生物を知ろうとしてきたのである。これこそが分類学の始まりであり、近年もDNA解析などの科学技術を用いて「様々な概念を考慮し種に名前をつける」という分類学が行われている。そしてこの分類学が間違いなく世界を理解する助けとなっていることが、本書では様々な例示を通して繰り返し語られている。
本書の読みどころは、分類学がどのように私たちの視点を広げてくれるのかを説得的に説明している点だろう。著者は、この点を「世界の解像度を高めてくれている」と言い換えている。「解像度を高める」ことは私たちの自然への共感と深くかかわる。その共感によって生物を知覚できる範囲が広がるだけでなく、著者のもっとも根源的な主張である地球をわかることにつながるからだ。これらを通して読者に、分類学が私たちの視野を広げるということがよく伝えられているだろう。したがって、この部分をよく味わってほしいと思う。