Reading Seminar #17, Autumn/Winter, 2025
2025年11月15日
お願い
民衆が演説をどう受け止めるかに関心を持たない者は、すなわち寡頭制を支持する者、説得よりも暴力に頼ろうとする者である。

今昔を比較して暇を潰す老人らは、つぎのことに気がついた。国家を統治した歴代の元首のうちで、他人の雄弁術を必要としたのは、ネロが最初であると。

最後に演説された貴族議員〔Hurgo院Heryef卿〕はあまりに偉大な雄弁の達人です。その巧みさゆえに、人は、彼の言葉を聞くに当たって、喜びから自然に生まれるあらゆる注意力を向けることがありません。聴き手の心には、部分的な表現や巧みな推論に惑わされるのではないか、という恐れから不安が生じるものです。しかし、彼はこのようなあらゆる不安を生じさせないほどに恐ろしい、理路整然と論じられる人(reasoner)なのです。諸君、私が常に恐れているのは、この貴族議員の想像力が与える装飾(ornaments)のなかで、誤謬が真実であるかのように見えすぎてしまうことなのです。そしてまた、理性の光によって導かれる自分自身を想像しながらも、その詭弁(sophitry)が私の知性(understanding)を惑わすことなのです。諸君、そこで私は、彼の装飾を再検討し、それが真実の力によるものなのか、それとも雄弁によるものなのか、私は試してみようと思う。


ある古代の著述家(プルタルコスだと思う)は、「聴衆の心に刺を刺した唯一の雄弁家」と呼ばれるペリクレスの雄弁について、幾つか詩を引用している。ペリクレスと同様に、この声明の雄弁さは、真の人間性(humanity)の感性と矛盾せず、むしろ感性を強化するものであり、私の心には皮膚以上に深く刺さった刺が残っている。この刺は、殺人者が外科であらゆる手を尽くして取り除こうとしても取り除くことはできず、また、この刺が生み出した胸の高鳴りは、強奪や没収という皮膚を和らげる湿布薬をもってしても和らげることはできない。私はこの〔革命フランス〕共和国を愛すことができない。

共通テスト「国語」や「公共、倫理」で出題される文章題は、世相や世代にあったテーマを扱う文献から引用されることも多く、じっくり読むと意外に面白い。とはいえ問題を解く立場だと、問題文をのんびり読んでる場合ではないし、内容にちょっと興味を持ったとしても、試験後の忙しさにかまけて忘れてしまう受験生が少なくないのではないだろうか。
京大新聞では例年、その年の共テ問題文の出典から数冊をピックアップし、その書評を掲載している。本面をきっかけに出題文を思い出し、受験後にでも読んでみようか、と思ってもらえれば幸いだ。(編集部)
国語:高岡文章(観光社会学者)「観光は「見る」ことである/ない:観光のまなざし」をめぐって」(『〈みる/みられる〉のメディア論』所収)
国語:蜂飼耳「繭の遊戯」(『極上掌篇小説』所収)
公共、倫理:ミシェル・アンリ(哲学者)『見えないものを見るカンディンスキー論』
Cf. 東進ハイスクール 解答・解説
Cf. 京都大学新聞「解かずに読む共通テスト書評2024」
大隅良典「細胞の謎を解く:科学「役立つ」だけで測れず」 (『読売新聞』2019年7月23日)
でもこれまでわからなかったことを知る喜び、知的好奇心こそが科学の原動力で す。……役に立つという言葉が独り歩きして、役に立つとは何かを考えず、2、3年で何か応用できて製品になる、というイメージが若者の間にも広がっているように思えます。
注目が集まる領域だけでなく、誰もがまだほとんど関心を示さないことに挑戦するのも、科学の進歩のためには必要です。それには色々なことに挑戦できるような広い裾野が何よりも大切なのです。
情報×方法×問題意識あるいは知的好奇心
紹介文は大学のウェブサイト(セミナー案内など)で紹介いたします
あなたは帝王切開なんてだめ、赤ちゃんには母乳が一番、子どもが三才になるまではお母さんが尽きっきりで子育てをしないとダメ、などといった偏見やうわさ話を耳にしたことがあるだろうか。
本書は、こういった事柄をデータや研究を通して、科学的に説明している。また、筆者は人間の行動を理解し、幸せにつなげるための枠組みである経済学を通して、事案について考え、家族の幸せというものの真実をとらえようとしている。本書は、家族の成立から子育てまで各分野について章立てされ、データや科学的根拠を基に「幸せとは何か」を問うている。
客観的な視点から著されているため、現時点で自分の家庭を持っていない高校生が、本書を読み進めながら、理想の家庭像を考えられるところが良い。また、子育ての経験がない高校生であってもデータから納得できる点が多い点も、本書のよい点である。もちろん、結婚していて子供がいない夫婦や結婚する予定のある人たちにとっても、本書は良書である。というのは、子育ての方針や家族のあり方を、決めておくことで子供が産まれた後などで意見の違いから二人の関係が悪くなるのが減ると思われるからだ。
物事と向き合う時は「事実」と「神話」を見分けることが大事だということを、本書は伝えている。データ分析などの結果には大きな説得力があるのだ。データ分析にはこのような利点があるが、近年、日本の研究のデータ不足と質の低下のため、適切な統計調査が難しくなっていると著者は言う。「調査を依頼されるようなことがあれば、ぜひ、協力して欲しい」という著者のメッセージに応えていきたい。
ある問題について対話や議論をするにしても、前提や土台を共有できない、軽く受け流し冷笑・嘲笑する、傾向が強まっている。特にSNSやネット上で幅を利かせる「論破」。人はなぜ言葉を交わすのか──人間と対話の本質的な関係を哲学の視点から解き明かす(出版社の案内)
ABEMA Prime「【学歴厨】ひろゆき×wakatte.TV!低学歴をなぜ罵倒?受験生からは大人気?中の人の正体は?大学って必要?」(via YouTube)
ReHacQ−リハック「【ひろゆきvs斎藤幸平】絶対NG!リベラルの真の敵は誰?【東京大学准教授・マルクス主義者】」(via YouTube)
まとめ方の注意点
例:行政学者の水口は、「何でも説明できるものは何も説明していないのと同じことである」と述べ、森の定義の曖昧さを批判する。
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