松本俊彦『誰がために医師はいる』

金沢大学 高大接続リーディングセミナー #20

苅谷千尋

金沢大学

March 21, 2026

読書が嫌いだというなら、それはまだ自分に合った本に出会っていないだけだ

J. K. ローリング

Ⅰ. イントロダクション

はじめに

お願い

  • 受講生のあいだでの意見交換、話し合う場合は、できるだけビデオオンにして下さい

本日のスケジュール(目安)

前半

  • 13:00-13:20 趣旨説明と目標
  • 13:20-13:30 自己紹介
  • 13:30-14:30(60分) 意見の共有(全体)

休憩(15分)

後半

  • 14:45-16:15(90分) 紹介文の作成(グループ)
  • 16:15-17:00 まとめ
    • 高大接続プログラム「大学での学び」レポート / 感想 / アンケート
  • 17:00 終了

自己紹介:苅谷

  • 専門:政治思想史
    • 18世紀イギリスの議会政治
    • 18世紀におけるレトリック受容
    • 18世紀における主権概念と国際法、帝国
  • 最近の興味関心
  • 講義:ビブリオバトル入門:ブクログ

趣旨説明

  1. 高校生向けに書かれた良書があるものの、高校生に読まれていない
  2. 大学での学びをイメージしてもらいたい
    • ゼミでの輪読
      • Cf. 研究者(大学教員)も輪読している
      • 1冊の本、論文を全員で読み、内容を共有、評価する
    • Cf. ビブリオバトルとの違い「競争ではない」
    • Cf. 静かな流行「読書会」
  3. 正解のない学びを体験して欲しい
  • Cf. 現代国語
    • 論文として紹介されているものもエッセイに近い
    • 大学で求められるレポート、論文の形式を知る

趣旨説明 > 静かな流行「読書会」

向井和美『読書会という幸福』

わたし自身が高校生だったころのことを考えても、本を読んで感想を言えと迫られて、いったいどれほどのことが言えただろうか。本からなにかを読みとり、それを切り取ってきて言葉にできるかどうかは、ある程度、人生経験の長さに比例している。だから、中高生にとっての読書会はあくまで「お試し」であってかまわない。これから先、さまざまな経験をしたあと、またいつかどこかで読書会に参加してくれればそれでいい(向井 (2022))。

趣旨説明:入試問題 > 京都大学新聞

4. 入試問題

共通テスト「国語」や「公共、倫理」で出題される文章題は、世相や世代にあったテーマを扱う文献から引用されることも多く、じっくり読むと意外に面白い。とはいえ問題を解く立場だと、問題文をのんびり読んでる場合ではないし、内容にちょっと興味を持ったとしても、試験後の忙しさにかまけて忘れてしまう受験生が少なくないのではないだろうか。

京大新聞では例年、その年の共テ問題文の出典から数冊をピックアップし、その書評を掲載している。本面をきっかけに出題文を思い出し、受験後にでも読んでみようか、と思ってもらえれば幸いだ。(編集部)

趣旨説明:入試問題 > 京都大学新聞

趣旨説明

  1. 学問
  • 大隅良典「細胞の謎を解く:科学「役立つ」だけで測れず」 (『読売新聞』2019年7月23日)

    でもこれまでわからなかったことを知る喜び、知的好奇心こそが科学の原動力で す。……役に立つという言葉が独り歩きして、役に立つとは何かを考えず、2、3年で何か応用できて製品になる、というイメージが若者の間にも広がっているように思えます。

    注目が集まる領域だけでなく、誰もがまだほとんど関心を示さないことに挑戦するのも、科学の進歩のためには必要です。それには色々なことに挑戦できるような広い裾野が何よりも大切なのです。

  • 情報×方法×問題意識あるいは知的好奇心

    • 情報や方法は勉強である程度どうにかできるが・・・

紹介文(合作)の作成

  1. 受講生全員の意見をできるだけ反映しよう
    • 共通点の発見
    • 納得できる意見の発見
  2. 高校生(または同世代)に向けたものにしよう

紹介文は大学のウェブサイト(セミナー案内など)で紹介いたします

紹介文:石沢武彰『手術はすごい』(1/2)

みなさん、手術というのは、スーパースターのような偉大な人がやっていると考えていませんか?実は意外と手先の器用さより、どんなことが起きても対処できるようにする思考回路の方が重要なのです。確かに、ある程度のトレーニングが必要にはなりますが、どのタイミングで手術を行うのか、どこを切るかなどの思考回路を育てていくのが大切です。

一般的に外科医師に求められる能力は、技術や器用さだと思われていますが、本書によれば、外科医に求められるのは、知識をもとにした直感的な判断力とともに、治療全体を見通したうえで、手術をどう行うかという戦略的な思考力です。そのため、考える力のほうが外科医師に必要な力だといいます。

本書は、著者が「戦略・戦術」、「武器」、「技術」などの観点から、手術における魅力や重要性、外科医として必要になる能力について語っています。

紹介文:石沢武彰『手術はすごい』(2/2)

医学界での化学技術は日々進化していますが、手術は外科医自らの技術や判断力、体力などを結集させた総合力で行われます。そして、手術の経過においては全体を見通し、安全な手術を行うための外科医の思考過程が最も重要であると著者は述べています。

本書では、「現代の技術が、洗練された医療機器と治療戦略、修練を積んだ外科医の技能、そして患者さんの治癒力で成り立っている」という点を重要な視座として据えながら、これらの要素が相互に補完し合い、手術という医療行為が成立していく過程を体系的に提示しています。

多少専門的な表現も出てきますが、外科医としての視点を現代の技術について一般の人にも伝わるように丁寧に解説しているために、医学部を目指している学生だけでなく、手術のアフターケアに関わる医療関係者はもちろん、これから消化器外科での手術を受ける患者にも読んでほしい一冊です(753文字)。

Ⅱ. 自己紹介

自己紹介

  1. 名前、出身地、学年
  2. 本セミナーに参加した理由
  3. 好きな本、お勧めの本
    • なければ、好きな科目など、好きなことなら何でも

Ⅲ. 著書情報

今回のテーマ:松本俊彦『誰がために医師はいる』

出版社の案内

ある患者は違法薬物を用いて仕事への活力を繋ぎ、ある患者はトラウマ的な記憶から自分を守るために、自らの身体に刃を向けた。またある患者は仕事も家族も失ったのち、街の灯りを、人の営みを眺めながら海へ身を投げた。 いったい、彼らを救う正しい方法などあったのだろうか? ときに医師として無力感さえ感じながら、著者は患者たちの訴えに秘められた悲哀と苦悩の歴史のなかに、心の傷への寄り添い方を見つけていく。……嗜癖障害臨床の最前線で怒り、挑み、闘いつづけてきた精神科医の半生記(出版社の案内)。

今回のテーマ:松本俊彦『誰がために医師はいる』

著者:松本俊彦

今回のテーマ:松本俊彦『誰がために医師はいる』

使用薬物は、14年には脱法ハーブのような危険ドラッグが約半数を占めていたが、規制が強化されて以降、せき止めや風邪薬などの市販薬が年々増え、24年では72%を占めた。

市販薬使用者の93例の内訳を見ると、女性が89%と大半を占めたほか、最近1年以内に自殺・自傷を試みた人は83%、学校に在籍している人が74%だった。

松本部長は「非行歴がなく、いわゆる『普通』の女子に薬物が広がっている」と深刻な状況だと指摘し、「ドラッグストアは数多く、個数制限の意味はほとんどない。対策の重点を女性に置き、カウンセリングや自殺防止に力を入れる必要がある」と強調した。

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補足:医局制度

  • 大学医学部の研究室(=医局)が、卒業生である医師の職務先を決める仕組み
    • メリット:地方の病院にも医師が行き渡る; 若手がいろいろな現場を経験できる
    • デメリット:医師の勤務先を制約;閉鎖性
  • 新医師臨床研修制度(2004年)
    • 医局に入らなくても研修できる仕組み(自分で専門分野(内科・外科など)を選び、研修先を応募して決める)
    • ➡︎ 需給バランスが崩壊
    • ➡︎ 新制度に伴い、医局制度の影響力は低下

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補足:医局制度

  • Cf. フランス:LES ÉPREUVES CLASSANTES NATIONALES(ECN)
    • 全国統一試験の結果によって、全国の医学生が1位から順に並べられmその順位に従って、専門分野+研修先(都市・病院)を選ぶ
  • Cf. アメリカ:National Resident Matching Program(NRMP)
    • 学生は行きたい病院・専門の順位リストを提出、病院は欲しい学生の順位リストを提出して、コンピュータが最適な組み合わせを決定

今回のテーマ:松本俊彦『誰がために医師はいる』

補足:大学の授業

今回のテーマ:松本俊彦『誰がために医師はいる』

病気を抱えた人には、家族や地域とのつながり、仕事、価値観など、多様な背景がある。医学的・生物学的知識だけに基づいて疾患を治すことが、幸せにつながるとは限らない。患者の「社会的・文化的文脈」を理解して治療に臨むのが、医療人類学の姿勢だ。

 文部科学省などが医学生の必須の学修目標を明確化した「医学教育モデル・コア・カリキュラム」にも、2016年度版以降、医療人類学の視点の重要性が明記されている。

今回のテーマ:松本俊彦『誰がために医師はいる』

補足:啓発活動

今回のテーマ:松本俊彦『誰がために医師はいる』

補足:その他

「私は狂人の無意識ではなく、狂人の意識のほうを詳しく調べてみたいと思う。行間を読んで隠れた意味を探し出し失われた子ども時代を再構築して声にならない欲望をあらわにするのではなしに、狂人が言いたかったこと気にかけていたことのほうを、私は探索してみたい」(ポーター (1993))。

  • EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)

Ⅳ. 意見の共有

意見の共有

  • 別紙「事前課題一覧リスト」に沿って進めます
  1. 著者がもっとも主張したい事柄
  2. あなたが重要だと考えた箇所
  3. 著者の主張のうち、理解できなかった点、納得できない点、よくわからなかった点
  4. この本の感想

フリーディスカッション

  • グループワーク
    • 受講生主導で思ったことを自由に話しあってみましょう
    • 事前課題一覧リストを参考にしてもいいし、しなくてもかまいません

Ⅴ. 紹介文の作成

紹介文の内容

  • 字数:400-800
  • 書いて欲しいこと
    1. どんな人に読んで欲しいか(向いているか)
    2. 著者の主たる意図
    3. 読みどころはどこか
    4. 内容の要約
    5. +α(メッセージなど)

全員で一つの紹介文を作成します(一人ずつ紹介文案を作るのではありません)

まとめ方の注意点

  • 順序はこの通りでなくてかまいません
  • この通りでない方がよいでしょう

紹介文の内容

新聞書評の勧め:短くて難しくない!

「理科の先生のメガネ」書評 ふとした日常に働く科学的思考

〔冒頭の段落〕タイトルのネーミングが良い。内容は周囲に満ち溢(あふ)れる不思議や疑問に「気付く」「観(み)る」「考える」という章立てで進み、自分の答えを「試行する」こと、周囲へ「表現する」ことはいつ何時でも可能だと教えてくれる。各項目も短く、著者が勧めるように日めくりカレンダーのように読み進めるのもいい(リンク)。

紹介文のポイント(1/3)

⑴ 主語

  • 著者(松本)の主張と、解釈者(セミナー参加者)の主張を書き分ける
  • 主語を明示的に書く
    • 著者:著者は、松本(敬称不要)は、本書は
    • 解釈者:文脈上、自明の場合は、私たち、私たち高校生は、主語は明示しなくてもよい
      • 読み手が迷う可能性があれば、明示しましょう

    例:行政学者の水口は、「何でも説明できるものは何も説明していないのと同じことである」と述べ、森の定義の曖昧さを批判する。

紹介文のポイント(2/3)

⑵ 引用

  • 直接引用
    • 特に重要なところを抜き出す
    • 「」(一重括弧で囲む・アカデミックな決まり。論文、レポートではページ数の記載が必要だが、今回は不要)
  • 間接引用
    • ポイントを自分の言葉で言い直すこと(同上)

紹介文のポイント(3/3)

⑶ 読みどころ(解釈)の提示

  • 著者の考えではなく、セミナー参加者の考え、意見を示す

⑷ 紹介文(レポート)に相応しい動詞、形容詞の選択

  • × 思う(特に思うの多用は厳禁)/ すごい
  • ○ だろう / 優れた

グループワーク

Ⅵ. まとめ

高大接続プログラム「大学での学び」レポート

  • このプログラムは金沢大学KUGS高大接続プログラム(大学での学び)の対象です
    • KUGS高大接続プログラム(の修了)
    • ➡ 「KUGS特別入試」の出願資格要件
  • 締め切り:開催日(本日)から 1か月以内
  • 特別入試に興味がある方は公式サイトをご覧下さい

重要

  • レポート評価の返却に最大で約1ヶ月半かかります。レポート提出期限は1か月以内ですが、早く提出した方が早く返却されます

高大接続プログラム「大学での学び」レポート

課題内容

  • 題名:「あなたが受講した個別プログラム名」
  • 本文:
    1. 「受講した個別プログラムの要約」
    2. 「受講して気づいた課題(問題)」
    3. 「その課題(問題)を解決するために必要と思われる方策」について,あなた自身の考えを根拠に基づき具体的に記してください。

高大接続プログラム「大学での学び」レポート

注意事項

  • 要約はこのセミナーに参加していない者が読んでもわかるように書きましょう
  • 感想文にならないように注意しましょう
  • 受講して気付いた課題を明確に書けるかどうかが鍵です
  • 課題は内容にかかわる社会的な事柄(自分の事柄ではない)にしましょう

高大接続プログラム「大学での学び」レポート

高大接続プログラム フローチャート

参加証

  • セミナー終了後、個別にメールでお送りします
  • 金沢大学に限らず、大学の出願書類として利用して下さい
  • 主体性評価の判断材料となる可能性があります

セミナー後アンケート

  • 提出先:Google Forms
  • 締め切り:明日(3月1日(日)23時59分)

アンケートURLは、参加証を添付するためのメールにも記載します

参考文献

参考文献

ポーター,ロイ(目羅公和.訳)., 1993. 狂気の社会史:狂人たちの物語, 叢書・ウニベルシタス. 法政大学出版局.
向井和美., 2022. 読書会という幸福. 岩波書店.
松本俊彦., 2021. 誰がために医師はいる:クスリとヒトの現代論. みすず書房.