

![]()
Ⅰ. 概要
リーディングセミナーでは、近年、⼤学界隈において話題の、⾼校⽣向けに書かれた(または⾼校⽣にも考えて欲しい)、新書や⽂庫を1冊、取り上げ、参加者で読書体験を共有します。
今回は、戸谷洋志先生の『詭弁と論破:対立を生みだす仕組みを哲学する』(朝日新書、2025)。「それってあなたの感想ですよね?」「嘘つくのやめてもらってもいいですか?」。このようなフレーズがはびこり、社会を翻弄しています。著者はこのようなフレーズを「論破芸」と揶揄しつつ、その特徴を分析し、対処法を提案しています。「エビデンス至上主義」「ポスト・トゥルースの時代」「集団分極化するソーシャルメディア」といった章立てで構成される本書をヒントに、議論こと自体の意味、議論が成立する条件について考えてみましょう。
- 図書は各自、書店や図書館で入手して下さい
- 事前課題にお答え下さい(以下参照)
1. 日時
- 2025年11月15日(土) 13:00-17:00
2. 事前課題
- 提出先:Google Form
- 開催日前日(11月14日(金)23時59分)までに、課題に答えてください
- 当日は、事前課題をもとに、参加者で議論し、紹介文を作成します
3. 会場(対面参加者)
- 金沢大学 角間キャンパス
- 総合教育講義棟A2講義室
- Google Map
- 公共交通機関(via 北陸鉄道バス)
- バス停(乗り口)
- 金沢駅兼六園口(東口)8番乗り場発 93・94・97金沢大学行き(兼六園下経由)
- バス停(下車):金沢大学中央バス停
- 中央図書館まで徒歩約5分
- 時刻表(北陸鉄道バス 公式サイト)
- バス停(乗り口)
土曜日開催のため、講義棟1階、2階の玄関自動扉の開閉時間は12:45~13:15に限っています。何かありましたら、kariyach@staff.kanazawa-u.ac.jpまでメール下さい



服装の指定はありません。暖かい服装でお越し下さい
4. Zoom(オンライン参加者)
- 接続方法:ZOOM URL
少人数のグループワークです。できるだけビデオオンでご参加下さい
Ⅱ. 配布資料
アクセス権が必要な場合は、適宜クリックするか、以下のメールアドレスにお問い合わせ下さい
Ⅲ. セミナー後アンケート
- 提出先:Google Forms
- セミナーの翌日(11月16日(日)23時59分)までに回答下さい
Ⅳ. 連絡先
- 担当講師(苅谷):
- メールアドレス:kariyach@staff.kanazawa-u.ac.jp
- 研究室直通:076-264-5814(セミナー開催中は会場にいるため対応できません)
- 入試課:076-264-6082(平日開催の場合のみ対応できます )
- 当日、体調不良などで急きょ、参加できなくなった場合は、簡単で結構ですので、上記のメールアドレスに連絡下さい
Ⅴ. 紹介文
詭弁、論破という言葉から、あなたは、どのような状況を思い浮かべるだろうか。現代日本では、いわゆる「ひろゆき現象」に代表されるように、詭弁的な言い回しや論破を狙った発言が一種の流行となっている。これは、言葉が本来もつ対話的で、協働的な機能よりも、議論の勝敗や瞬間的な刺激が優先されるメディア環境の影響があると思われる。本書はこのような現象を批判的に分析する一冊である。
筆者の戸谷(倫理学者)は、ひろゆき氏の論破を、言いがかりをつけやすい一部の問題だけをあげつらい、勝ったように見せかけているだけであり、これを怪物、つまり詭弁として捉える。また、ソーシャル・メディアは、この詭弁を助長し、集団分極化をもたらしたと指摘する。ここで著者が問題視する「集団分極化」とは、同質的な情報に囲まれることで、意見がより極端化していく現象である。筆者は「断言的な言葉は思考を停止させる」と指摘した上で、真実は視点で変わりうることを強調する。だが、このように視点を変えることは簡単ではないとも言う。「ポスト・トゥルース」と呼ばれる、客観的な真実を軽視する状況に陥っているからである。
筆者は、このように問題背景を分析しながら、人々が「相手に勝つこと」自体を目的とする言葉(すなわち「論破」)に偏りすぎている点に問題の焦点をあわせる。その上で、彼が示す解決策は、議論における倫理を取り戻すことである。戸谷は、過去の哲学的な議論を参照しながら、「詭弁は本質をゆがめる危険があり、論破は相手との関係や対話を壊してしまうことがあるため、言葉を使う際には倫理的な配慮が必要であり、誰に対しても論破力を向けるような議論の姿勢から距離を置くべきであり、互いの立場や感情を尊重しながら言葉を使う倫理、すなわち、誰に対してもの論破力での議論ではなく、互いを尊重しながら対話できる社交での議論の回復を目指す」ことが重要だと主張する。つまり、「社交」こそが、挑発や煽りを抑制し、詭弁を防ぐための手段だと言うのである。
本書の読みどころは、論破文化が人々をヘレニズム状態に落ち入れさせ(「議論」の場を壊す、ことを指す)、生きる希望を失わせていくよう作用し、対立を生むという現象を掘り下げるだけでなく、その解決策を提案し、読み手自身に考えることを促す点にある。解決策である「社交」のポイントは2つある。一つは議題の本質を忘れないことである。これによって、話し合いの論点にずれが生じることを防ぐことができる。二つ目のポイントは、ある問題に対して一つの見方に執着しすぎないことである。様々な情報ツールを用いることが、正しい判断に近づく道である。
本書を読み、議論した私たちセミナー参加者は、議論の根本的な目的に立ち返り、様々な視点を取り入れることで、詭弁とは一定の距離を保ち、場合によっては不信感をもつことで対抗できると考えた。また、論破や詭弁に惹きつけられやすい人ほど、まず議論の目的を確認し、自分一人の判断に頼りすぎず、周囲の意見も取り入れながら、疑う態度を大切にすることが重要だと考える。
そして、国会答弁で野次や文句ばかり言って具体的な政策内容を考えていない国会議員にも、この本を読んで欲しい。すべての議員が詭弁家であるわけではないが、実際にそのような議員も多く存在している。国会がただの「口喧嘩会場」にならず、建設的な政策について議論できる国会を取り戻すためのヒントが本書にあると考えるからだ。
Ⅵ. その他
- このプログラムは金沢大学KUGS高大接続プログラム(大学での学び)の対象です
- 特別入試に興味がある方は公式サイトをご覧下さい