
#4 選挙制度と政治意識
January 21, 2026
以下の2種のレポートが未提出の場合、成績評価の対象になりません(単位は認定されません)
「あなたがつくる、読書案内」――ご好評をいただいた、岩波新書フェア連動企画「芋づる式!読書MAP」。自分でもMAPを作ってみたい、という声に応え、書名の入っていない白地図版を用意いたしました。……芋づる式につながるひろがる、あなたの読書の世界へ連れていって下さい!(岩波書店 (2019))
解答用紙(A3用紙)は対面授業で配布します
創意工夫
注意事項
AIは、出来る人をより出来るように、出来ない人をより出来ないようにする(読売新聞「[教育の未来図]<5>AI普及 思考力が不可欠」(2026年1月13日))
昭和天皇と平成天皇の戦争責任に対する対応として、これまでは「素直に謝るべきではないか」というイメージを持っていたが、昭和天皇の場合戦争責任を認めると自身の退位に繋がってしまうと知り、天皇ごとの発言の意味合いの違いに重要性を感じたから。また、象徴天皇論を比較した場合、昭和天皇より平成天皇が深く象徴について考え、行動していることに気づけた一方、令和では負担なども考え、象徴としての役割をどのようにしていくのか改めて考えるべきと思ったから(大石さん)。
天皇象徴制について、初めて学習したときから結局どのような制度なのか理解していなかった。しかし、国民・政府・天皇自身のいずれも象徴のあり方を明確に定義できておらず、その中で平成の天皇のみが自ら象徴とは何かを考えてきたことを知り、驚くとともに面白いと感じた。また、有識者の「天皇は公務ができなくても良い、存在するだけで良い」というような意見に対して、天皇が落胆したということが印象に残った。このことから、天皇象徴制を天皇任せにするのではなく、全ての国民が投げやりにせずに考え、象徴について納得のいく答えを出すべきであると考えた(兼清さん)。
昭和天皇は、天皇を「国民の道徳的模範として国民を教育する」ための存在であると考えていた点に現代との違いを感じた。現代では、道徳的模範とできるほど天皇の様子に触れる機会がないと感じているが、昔はそのような機会が多かったのか気になった。また、1人の天皇という個人の人間に道徳的模範が務まるのかは難しいと感じた(泉水さん)。
首相への事前の通達なしで平成の天皇が退位の意思を表明したことは、宮内庁と内閣の連携が十分にとられていない実態を明るみにした。政治家たちは国民の政治への不満を抑えるために天皇を利用していたのではないだろうか。内閣側の天皇の意思を尊重するという意識が不足していたと考える。現在は天皇が代わり、天皇としての活動が再検討される状況にある。今後ますます、宮内庁と内閣の連携強化が求められるだろう(橋本さん)
私はこれまで、なぜ一見単純そうな皇室継承問題の議論で、こんなにも揉めているのかよくわからなかった。しかし今回の講義で、この問題は、天皇は何のためにあるのか、象徴天皇制とは一体何なのかといったことを踏まえて考えなければならないということを学び、疑問が解決したから。私を含め、単純に男系か女系かといった問題で捉えられることが多いが、もっと広い視野でこのような問題は捉えていく必要があると考えさせられたから(引地さん)。
国民とは何かについて、当たり前に使われすぎていて考えることがなかったが、国民とは、近代国家誕生に伴って大国に対して競争力を持つ必要があり、個人個人が結束力を持つ必要が生まれたため、日本であれば日本国民という集団を作り、そこに親近感をもつようになることでできたものだと知った。またばらばらである個人をまとめるための手段として、政治というものがあり、国家が成り立つこをを知った(長谷川さん)。
Japan is consumed by talk of a “foreigner problem”. The story goes that the country has been overrun by ill-mannered migrant workers, misbehaving tourists and opportunistic foreign investors. But Japan’s real problem is not that it hosts too many foreigners. It is that it has too few.
日本中が「外国人問題」の話で持ちきりだ。礼儀知らずの外国人労働者、マナーの悪い観光客、利益を得ようと好機をうかがう外国人投資家に国が占領されたという話だ。しかし日本の本当の問題は、外国人を受け入れすぎていることではない。むしろ、外国人を受け入れが少なすぎるのだ。
Since becoming prime minister, Ms Takaichi has proposed tightening the screws on foreigners in the hope of winning voters back to the ldp. Her administration has talked of crackdowns on people who overstay visas, taxes on tourists, restrictions on property purchases and caps on foreign labour. A package of measures may be put forward later this month.
高市首相は就任以来、有権者を自民党に取り戻すため、外国人への締め付け強化を提案してきた。政権はビザの期限切れ滞在者への取り締まり強化、観光客への課税、不動産購入制限、外国人労働者の受け入れ上限設定などを議論している。今月下旬にも一連の対策が打ち出される見込みだ。
Vilifying outsiders may make for good politics. But in the long run it is misguided. The true causes of voters’ frustrations are economic struggles. Cracking down on foreigners will not heal the underlying malaise. If anything, it will make it worse.
外国人を貶すことは政治的には効果的かもしれない。だが長期的には誤った方向だ。有権者の不満の真因は経済的苦境にある。外国人への取り締まりは根本的な不調和を癒さない。むしろ悪化させるだけだ。
Instead of cracking down on foreign workers, it should design an immigration system that attracts and selects newcomers with useful skills, integrates them into society and ensures that they pay their fair share of health-care and welfare costs. The real problem is not foreigners. It is the failure to take advantage of one of Japan’s greatest strengths—that it is a wonderful place to live and work.
外国人労働者を締め上げる代わりに、有用な技能を持つ新規移民を惹きつけ選抜し、社会に統合させ、医療や福祉の費用を公平に負担させるような移民制度を設計すべきだ。真の問題は外国人ではない。日本の最大の強みの一つ——つまり、住み働きに素晴らしい場所であるという点を活かせないことにある。

高市首相の個人の支持率が着目されがちであるが、内閣の編成や軸が重要になるという視点を身に着けることができたから。特に、政権の長期化について、小泉政権と比較して安定性を検証することは、単なる支持率ではなく、政策の一貫性や人事の継続性、党内基盤の強さといった構造が政権運営に与える影響を考える上で有効であると感じた。これにより、政権の評価は個人の人気だけでなく、内閣の編成や政治的軸の明確さといった観点から総合的に捉える必要があることを理解することができた(今井さん)。
高市政権が「第2次安倍政権の意識」を継承している一方で、実際には官邸機能の弱体化や与党基盤の不安定さに直面しているという現状分析が非常に鋭いと感じました。安倍氏のような強力なリーダーシップを演出しても、実態が伴わなければ、直前の石破政権と同様に短命で終わるリスクがあるという指摘は、現在の政治状況の危うさを的確に示唆しています。長期政権を目指す上での構造的な課題が明確になり、非常に興味深く読みました(尾崎さん)。
なぜなら、日本の政治は長い間男性が中心となって担われてきたため、私たちのような若い世代や多くの女性にとって政治は自分とは遠い存在だという意識が生まれているからです。そのような中で女性の首相が誕生することは、政策内容そのもの以上に、自分と同じ立場の人でも政治の中心に立てるんだという象徴的な意味を持ち、閉塞感を和らげる効果があると考えました。この指摘は、政治の評価が政策実力能力だけでなく、人々の意識や社会の雰囲気にも影響を与えることを示していると思います。一例として、「サナ活」という言葉が生まれていて若者の間で政治への興味が出ているように、女性が首相となったことで変化が起きていると考えました(岸さん)。
高市首相が、従来の政治家が持っているあくの強さを感じさせずキャスターのような爽やかな仕草や笑みをもっているという指摘が、ただ単に女性首相の誕生ということでなく、女性や若年層の閉塞感の打破するためのシンボルとして機能を期待できると感じ重要であると思った。しかし、キャスターのように台本を読んで終わりの政治家になるのでないかという懸念には留意が必要だと感じたから(髙坂さん)。
規模の小さい政策をたくさん掲げていくことは、達成することを重視しており良いことだと思っていたが、主導権を失い、各省の提案をそのまま受け売りにする小さな成果を出すだけの政権運営に陥ると知って驚いた。小さな成果が大きな成果につながる関連性を持った政策であるか、簡潔で大きな政策を掲げることは、政治が方向性を示すことにつながり、重要であると感じた。数だけでなく、政策同士のつながりや将来像を示すことが、政権の安定にも関わると考えた(泉水さん)。
高市早苗内閣が発足して、数か月がたったが、先日の日韓首脳会議で韓国の首相とドラムを演奏するなど、今までに見られなかった形で外交を進めている様子が印象に残っている。自民党総裁選の時に「働いて働いて働いて参ります」と述べていたように、スピード感のある政治が行われていくのではないかという期待感が国民にはあるように感じる。その中で現在、衆議院を解散し、二月に選挙が行われるのではないかという報道も出ている。何を課題の軸にしていくのかが、明確に見えてこない中で本当に選挙が行われることになると、各党がどのような問題を課題として捉え実践していくのか、過去や現状を踏まえてしっかり吟味していくことが重要だと感じた(米江さん)。
多少とも知識があれば、参議院の議席が中道系が圧倒的に少ないことが判るはずである。さらに、結成直後の政党が「対抗勢力」と考えるのには、無理があると言うべきであり、何をするかが見えていない中で期待する人が多いというのも妙である。ここは回答者が慎重かつ正しい判断をしているとみてよいのではないだろうか。

言い換えると、多くの有権者は、細かな政治や制度に関する事実については把握していない。有権者は曖昧なかたちでしか政治を理解していないからこそ、第5章で述べたように、党派性など簡便な手がかりを用いて政治に関する意思決定を行っているのである」(善教 (2025, p. 183))。
広く称賛された「マニフェスト選挙」の到来にもかかわらず、選挙公約が投票行動に及ぼす影響は依然として最小限である。二大政党の政策綱領にほとんど差異がないだけでなく、候補者が提示する類似した政策選択肢は有権者の政策課題に対する態度をほとんど反映していない(小林 (2006) 英語要旨──筆者訳)。
政治的無知は、有権者が政策課題への態度と投票決定を結びつけることを妨げる。政治的知識が乏しい有権者は、投票時に過去の生活実態評価に依存する傾向がある」(今井 (2008) 英語要旨──筆者訳)。
分析の結果、まず政治的知識と投票行動という2変数間の関係について、政治的知識レヴェルの低い人ほど自民党(候補)に投票する確率が有意に高いという傾向が、2003年総選挙でも2005年総選挙でも見られた。さらに、投票行動を説明する各要因の規定力が、どの程度政治について知っているかによって異なるという、政治的知識量の「条件付け効果」の存在が確認された(今井 (2008, p. 298))。
(今井貴子)制度の内側から多党化を誘発する構造になっていました。平成の政治改革は「二大政党による政権交代」を想定していました。ところが実際には、勝っている側には求心力が、負けている側には分裂して比例で生き残るインセンティブが働きやすい仕組みです。例えば民主党分裂後、国民民主党などいくつもの新党が比例を足場に政党として残ってきました。
(今井貴子)だからこそ、現実的には「今ある制度をどう運用するか」を考えることになります。多数決型であれば、与野党間のほぼ互角の競争を通じて政権交代の可能性が確保されるはずでした。しかし日本では、これまで一貫して非対称な状況が続き、そのうえ政党交付金や比例枠の仕組みが重なった結果、政党システム全体に遠心力がかかってしまった。となると、必要なのは制度を作り直すことよりも、現実に合わせて制度運用のルールを整えることです。多数決型に向かうにせよ、合意型に近づけるにせよ、いずれにも野党に特化した支援制度や透明性の確保といった固有のルールがあるはずですが、十分に整備されてこなかった。そうして築かれた経路によって、制度がうまく噛み合わなくなっているのだと思います。
(待鳥聡史)まったくそのとおりですね。にもかかわらず、去年あたりから、「多党化すれば合意形成型の熟議の国会になる」といった議論をずいぶん目にしています。これも相当に甘い感じがあって、実現させようと思ったら、相当な制度改革と運用の転換が必要になる。例えば、多党制による合意形成型方式に近づけようとすると、本来は法案ごとに頻繁な修正が必要になります。ところが日本の国会は、省庁と与党の事前審査で法案がほぼ固まり、野党の批判はあっても多くの法案がそのまま通る前提で人員や時間が配分されています。つまり、合意形成型に移行するには、この前提となっているリソース配分自体を根本から作り直さなければなりません(待鳥 et al. (2025))。
石橋筆頭が来られて色々意見を述べてる。信用できないから質問なさらないで下さいと言うのは表現として全く適切ではないと思っています。閣僚が国会議員の質問する権利について揶揄したり否定するのは本当に大きな間違いであると思うんです。
政府に入って答弁する方も質問する側も敬愛の精神というものが必要であると思っています。
私は「政治主導」の履き違えを正したいと思っている。小泉政権以降、劇場型で国民におもしろおかしく伝えればいい、と安易なポピュリズムに陥っている。減税の話をする人が多いが、一歩間違えば危険なポピュリズムになってしまう。だから、政府答弁の重みをもう一度復活させたい。政治家による雑な粗い答弁で結局、なにも生まれていない。今回も、厚生労働相が医療関係の数字の質問で答えられず、紛糾した。予算案の中身や数字については事務方に答弁させ、霞が関でどういう人が権能を使っているか見えるようにした方がいい。
遠藤(2024)
55年体制下の自民党と社会党との政策の違いはかなり明確であったが、それに比べると2000年代の自民党と民主党の政策の違いを見分けるのはずっと難しくなった。このことは、55年体制下で政治的社会化を経験する若者よりも、2000年代に政治的社会化を経験する若者の方が、政治的対立を理解するときに難易度の高い課題に直面したことを意味する(遠藤 (2024))
〔以下に示す〕調査結果によれば、応答性に対する期待を示す「選挙があるからこそ有権者の声が反映されるようになる」については、59%の回答者がこれを肯定している。なお27%の回答者が「わからない」「無回答」を選択しているが、もし学校で習った記述内容を無自覚的に受け入れていればこの意見を肯定したはずである。つまり、教科書の内容と現実との間に矛盾を感じている者が一定数いるということである。「政治や政府は、あまりに複雑なので、自分には何をやっているのか良く理解できない」は、政治に対する理解力についての自己評価を尋ねたものであり、この意見を肯定していれば内的有効性感覚が弱いと判断される。回答者の65%がこれを肯定していることから内的有効性感覚は全体として弱いとみてよいだろう。回答者たちは政治に不信を感じながらも外的有効性感覚が比較的強く、内的有効性感覚が弱いことから、政治に多くの事柄を委任し、政治参加を回避しようとする傾向があるといえよう(石橋 (2010, pp. 79–80))。
石橋(2010) 78頁 政治的態度
石橋(2010) 82頁 順位相関係数
石橋(2010) 89頁 公民科目の目的の認知
若年層とそれ以外の人びとの相違は実態としては小さいにもかかわらず、必要以上に若者の能力を低く見積もり、両者の隔たりを強調することはさまざまな問題を生じさせる。若者のなかの自尊心や投票参加への期待が失われるだけでなく、選挙に価値を見出せず、それを無駄と考える傾向も強まる。そのような若年有権者は、投票参加の権思うようになるだろう。これはただの杞憂ではなく、現実の問題となっていいても、本章では解説する(善教 (2025, pp. 174–5))。
米国とは違い、日本の有権者に「大きな政府」か「小さな政府」かと聞いても対立軸は見えてこないのですが、「変化を求めるか否か」「格差を許容するか否か」という問いを立てると、見えなかった対立軸が見えてきます。変化や格差をめぐり現状を許容する「システム正当化」の傾向は、高齢の男性ほど高いのですが、(高齢男性ほど社会的に有利な立場ではない)若い女性や低所得者にも現状を正当化し、投票する傾向があります」(朝日新聞「有権者の「三つの軸」政策に変換できない政党 心理学でみる投票行動」2024年10月20日)。
これまでは月曜深夜が締め切りでした。次回、月曜日の対面開催に合わせて、締め切りを土曜日深夜に変更しています