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苅谷 千尋, PhD

金沢大学 教育支援センター

Published

Wednesday, 1, Oct, 2025

Modified

Friday, 7, Nov, 2025

Keywords

シラバス;ビブリオバトル;ブックカード(情報カード);新聞書評

Ⅰ. 自己紹介

1. 自己紹介

  • 氏名:苅谷千尋(かりやちひろ)
  • 所属:教育支援センター(主担当業務:高大接続コア・センター業務)
  • 専門:政治学 > 政治思想史(イギリス)
    • 18世紀イギリスの議会政治と議会ジャーナリズム
    • レトリックの受容史:キケロ;サルスティウス;タキトゥス
  • 最近の興味関心
  • Webサイト

2. 校務(高大接続)

⑴ 高大接続リーディングセミナー

  • 高校生向けに書かれた新書らを読みあう

⑵ ボードゲームで学ぶ社会の平等と不平等

⑶ 高大接続ラウンドテーブル

⑷ 高大接続ビブリオバトル入門(構想中)

  • 何かよいアイデアがあれば教えて下さい

Ⅱ. ビブリオバトル公式ガイド

0. 考案者・谷口先生の言葉

一読み手としては、書店で買っても、ネット通販で買っても、大体、値段も変わらないし、本の内容は絶対に変わらない。買いやすい方で買えばいいのだ。それよりも、人生で読める本が限られているなか、一個人としての僕たちにとっては、「どんな本とどこで出会うか」の方が、ずっと大切な問題なのではないだろうか谷口忠大 (2013), p.11)。

友人や知人、親や先生、上司や同僚に薦められて読んだ本は、本棚の中でも独特の味わいを持って並んでいる気がする。本棚をよく見てみると、その本を共通の話題にした友人や知人がいたりすることに気づくのではないか。少なくとも僕の本棚にはそんな感覚がある。僕たちの書籍、情報との繋がりは、未だに自らの周辺の多くの人々に媒介されている谷口忠大 (2013), p.12)。

(友人の言葉・当時、工学部の大学院生)「僕たちが研究室でやっている研究でも、やっぱり、常に閉じた専門領域だけじゃなくて、その殻を破って他の専門領域と融合するんだって気概が必要やと思うんですよね」(谷口忠大 (2013), p.64)。(この前振りの後『禅と脳』を紹介)

1. コンセプト

  1. 本のフットサル(のように気軽に楽しむ)
  2. 本を通して人を知る 人を通して本を知る12

1 「読書のパラドックスは自分自身に至るためには書物を経由しなければならないが、書物はあくまで通過点でなければならないという点にある。良い読者が実践するのはさまざまな書物を横断することである。良い読者は、書物の各々が自分自身の一部を抱えて持っており、もし書物そのものに足を止めてしまわないよう賢明さを持ち合わせていれば、その自分自身に未知を拓いてくれるということを知っているのだ」(バイヤール,ピエール (2016), pp.263–264

2 「ある本についての会話は、ほとんどの場合、見かけに反して、その本だけについてではなく、もっと広い範囲の一まとまりの本について交わされる。それは、ある時点で、ある文化の方向性を決定づけている一連の重要書の全体である。私はここでそれを(共有図書館>と呼びたいと思うが、ほんとうに大事なのはこれである。この共有図書館>を把握しているということが、書物について語るときの決め手となるのである」(バイヤール,ピエール (2016), pp.35–36

2. ルール

  1. 発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる
  2. 順番に一人5分間で本を紹介する
  3. それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッションを2〜3分行う
  4. 全ての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全員1票で行い、最多票を集めたものを「チャンプ本」とする

本講義もこの公式ルールに準拠しますが、ブックカード適度に参照することは可とします(公式ルールはメモを見る行為自体不可)。ただし、常時、ブックカードを見る、ブックカードのメモを読み上げる行為は禁止します。あくまで、記憶の助けとして利用下さい

3. 成り立ち

ここで補足すると、一般に大学の理系研究室のゼミでは、大きな方向性の中で同じテーマを持って研究しており、メンバーの研究テーマや関心は比較的似た分野となります。ですから、勉強会となると、ある程度の知識を前提として、参考文献(書籍や論文)を読んできて考えを発表するか、自身の研究発表の進捗を報告するのが普通です。ですが、私たちが所属していた当時の共生システム論研究室は、「システム論」という非常に抽象的なテーマのもとに、多くのテーマで研究を進めており、したがってメンバーの関心は非常に幅広いものでした。加えて、大学院から当研究室に入ってくる学生も多く、テーマによって前提となる知識のレベルにも差がありました。いま思えば、この多様性の中でコミュニケーションを深める方法を考える必要があったことが、のちにビブリオバトルを生み出すに至った遠因にあります(ビブリオバトル普及委員会 (2013), p.21)。

4. ビブリオバトル公式大会

Ⅲ. ビブリオバトル入門の構成

構成

  1. 好きな本を紹介しよう
    • 好きな本(ジャンルを問わない※マンガは除く)
  2. 研究分野の本を紹介しよう
    • 専攻する研究にかかわる本(※学術書を意味しない)
  3. 研究分野と(少し)外れた本を紹介しよう
    • 研究分野とはまったく違う(人文科学系が自然科学系や医学系の本を選ぶ)、もしくは少し外れた本(日本史専攻者が中国史の本を選ぶ)など(※学術書を意味しない)
  • 以上の3つの本について、グループを変えて、計2回、報告して下さい(第1ラウンド1、第2ラウンドと表記、表現します)
    • 第1ラウンドの反省を第2ラウンドでは活かして下さい
    • 第2ラウンドではブックカードへの依存を減らしましょう
  • グループは3〜4人の少人数で編成します
    • トランプを配り、ランダムで編成します
  • 授業内で紹介する本を事前に読み、紹介の仕方について授業までに考えてきて下さい(ブックカード参照)
  • この授業のためにわざわざ本を選び、読む必要はありません(再読は必要かもしれません)。趣味で読んでいる本、この授業以外の授業あるいは研究のために読んだ本でかまいません

授業の約束(教員との約束)

この授業はグループワーク中心の授業です。教員一人では授業を作ることができません。皆さんも授業を作るメンバーとして(教員は学びの空間設計者、受講生はコンテンツ制作者)、以下の3つを心がけて下さい

  1. 元気に毎回出席する(ただし無理は禁物)
  2. グループワークには積極的に参加する
  3. 提出物はちゃんと出す

授業イメージ

授業終わりの振り返りの時間には、学生同士で「あの本はおもしろそうだ」などの感想などを言い合っており、活発な交流が見られました。先生からは特にアドバイス等はないため、発表者が聴衆をひきつける工夫やどうすればうまく伝えられるかなどは、学生が主体的に考えていました。SAが授業の進行をしているのは、「SAが言ったほうが学生に響くから」だそうです。

Ⅳ. シラバス

Ⅴ. 毎回の授業構成

初回と最終授業を除いて、毎回の授業は以下のように構成します

  1. 前回の振り返り(授業の感想の共有)
  2. グループ分け
  3. アイスブレイク
  4. ビブリオバトル
    1. 本の紹介
    2. 質疑応答
    3. アフターセッション(チャンプ本の決定を含む)
  5. チャンプ本プレゼンテーション(2名程度・ランダム)
Note | 補足
  • 各グループにおいてチャンプ本に選ばれた方は加点します
  • チャンプ本のプレゼンテーションを行った方は最終日に報告する必要はありません
  • アイスブレイクは、クラスの雰囲気が打ち解けてきた場合は省略します

Ⅵ. 成績評価

重要 | 成績評価
  • 出席自体は評価対象ではありません
  • 受講生全員に(最低でも)A評価を付けられるように、成績評価物、成績評価基準を設けています
    • 特に、提出すれば機械的に点数が付くものを落とさないようにして下さい

1. 宿題

⑴ ブックカード

公式サイトに掲載のシラバスではブックシートと表記していましたが、要点だけを書いて欲しいので、ブックカードにあらためています

  • 情報カード3を配布します。情報カード一枚に以下の2点について、箇条書き的にメモして、当日に臨んで下さい
    1. 書評本の内容や構成などに関するメモや重要な一節の抜書き
    2. 書評者の書評本に対する評価、考え、意見などに関するメモ
  • この他、本の著者名、書名、受講生の氏名を記載して下さい
  • ビブリオバトルの基本的な考え方は、メモを読み上げるのではなく、アドリブ的に紹介することです。ですので、情報カードに読み上げ原稿を書くなどの行為は禁止します。あくまで、何をどのような手順で話すか、など、メモ程度の記述4として下さい
  • 情報カード裏面は他の受講生から受けた質問などをメモするためだけに使って下さい
  • ブックカードは、1. 好きな本を紹介しよう、2. 研究分野の本を紹介しよう、3. 研究分野と(少し)外れた本を紹介しよう、の3回、提出して下さい
  • 情報カードそのものは回収しませんが、予習確認のために、写真に撮ってGoogle フォームより送って下さい(提出先はこちら
  • 各10点、計30点(どのようなまとめかたをするかは人それぞれですので、質的な評価はしません。提出すれば機械的に10点を付けます)

3 情報カードは、ある時期まで、京都大学の研究者、学生を中心に、積極的に利用されていた。文化人類学者・梅棹忠夫の『知的生産の技術』が著名。「学校では知識は教えるけれど知識の獲得のしかたはあまり教えてくれない。メモのとり方、カードの利用法、原稿の書き方など基本的技術の訓練不足が研究能力の低下をもたらすと考える著者は、長年にわたる模索の体験と共同討論の中から確信をえて、創造的な知的生産を行なうための実践的技術についての提案を試みる」(出版社の紹介文)(梅棹忠夫 (1969)

4 「さまざまな機会に出会う書物のひとつひとつについては、詳しすぎることを言ってその意味を狭めることは慎み、むしろ、その潜在的可能性がいささかも失われないよう、そのポリフォニーを最大限に尊重する方向でそれを迎え入れなければならない。…われわれが書物と取り結ぶプライベートな関係についてわれわれに言えることが力をもつのは、われわれがそれについてあまり考えず、無意識がわれわれのうちで自己を表現するにまかせるときである。無意識は、言語が開放されたこの特権的な時間において、われわれを書物へ、そして書物をとおしてわれわれ自身へと結びつける秘密の関係を明かしてくれるのである。 このあいまいさは、書物については自分の意見に自信をもち、それを押しつけるべきだというバルザックの教えと矛盾するものではない。むしろこの教えの別の側面だといえる。それは、この言語空間の特殊性と各発言者の個別性を理解したということを示すひとつの方法なのである。もし各人が話題にしているのが一個のへ遷酸製としての書物)であるのなら、〔演技と遊戯の〕共用空間は破壊しないほうがいい。そしてわれわれの会話に立ち現れる<幻想としての書物)についていえば、自分にも他人にも「読まない」可能性、「夢みる」可能性を残しておく方がいいのである」(バイヤール,ピエール (2016), pp.244–255

⑵ 授業の感想

  • 毎回、重要だと思った点や面白いと思った点など、自由に授業の感想をまとめて下さい(150字から200字程度)。
  • 初回と最終授業については、授業についてのアンケートも付しています
  • 各3点、8回実施、全て提出した者は+6点、一度提出しなかった者は+3点、その他は加点なし、計30点(質的な評価はしません。規定字数に達していない、あるいは毎回、同じ内容の感想を書いている、他人の感想を書き写しているなどのようなものでなければ、提出すれば機械的に3点を付けます)
  • 提出先はこちら

⑶ 学期末振り返りレポート

  • 詳細は別途連絡します(A4一枚程度)
  • 10点(基準点:7点、ルーブリックに準拠します)

2. その他

⑴ 受講態度

  • グループワークへの貢献度、参加度(10点、基準点:7点、ルーブリックに準拠します)
  • グループワークにおいてチャンプ本に選ばれた回数に応じて加点(各2点、最高10点まで)

⑵ プレゼンテーション

  • 実施日:
    • 各授業の最終セクション「チャンプ本プレゼンテーション」
    • 上記でプレゼンテーションを行わなかった者は最終授業日(11月26日)
  • 評価:
    • 本の紹介及び質疑応答の受け答え
    • 10点(基準点:7点、ルーブリックに準拠します)
  • 全てのプレゼンテーション実施後に、ビブリオバトル入門《2025》のチャンプ本を決定します(投票)
    • 優勝者には5点、2位と3位は3点、4位と5位は2点をボーナス加点(100点満点の範囲外で加点)します

Ⅶ. 新聞書評と出版会社PR誌

Ⅷ. グループ交流会

  • 次回以降の授業運営の練習を兼ねて、グループ交流会を行います
    • トランプのカードを引き、数字に応じて、席を移動して下さい
  • 自己紹介
    1. 氏名、学年、学類
    2. 受講理由
    3. ビブリオバトルの経験の有無やイメージ
    4. これまで金沢大学で受講した授業で好きな授業名とその理由
重要 | グループワークの心理的安全性
  • 「この場では安心して意見を言える」という感覚が何より大切です
    1. グループワークで話したことは外に持ち出さない
    2. 相手の意見を批判しない(マウンティング行為を含む)
    3. グルームのメンバー全員が「つながり」を生む声かけを心がける(「◯◯さんはどう思いますか?」)
禁止 | マウンティング行為
  • 知識ひけらかし型:「この本は原著で読んでるから、翻訳はちょっとね」/ 「作者の別の論文を読んでないと本当の意味は分からないよ」
  • 先取り型:「あー、この後の展開は◯◯だから、そこまで読まないと面白さはわからないよ」/「私、もう続編も全部読んでるから」
  • 比較優位型:「その感想は初心者っぽいね」 / 「自分はもっと難しい本を普段読んでるから、この本は物足りないかな」
  • 発言の矮小化型:「その見方は浅いよ、本当はこう読むべきなんだ」 / 「その感想はよくあるけど、重要なのは別のところだよ」 / 「それってあなたの感想ですよね」

Ⅸ. 宿題と次回の持参物

  • 宿題:
    1. 授業の感想
    2. ブックカード
  • 持参物:ブックカードと、選択した本

宿題と次回の持参物については今回の授業で説明した通りです。特段の変更がない限り、次回からは案内しません。特にホームページを参照下さい

引用文献

バイヤール,ピエール (2016) 『読んでいない本について堂々と語る方法』, 筑摩書房.
ビブリオバトル普及委員会 (2013) 『ビブリオバトル入門 : 本を通して人を知る・人を通して本を知る』, 情報科学技術協会.
梅棹忠夫 (1969) 『知的生産の技術』, 岩波書店.
谷口忠大 (2013) 『ビブリオバトル:本を知り人を知る書評ゲーム』, 文藝春秋.